2021 Fiscal Year Annual Research Report
酵母プリオンタンパク質Sup35の線維化を制御する新規添加剤の開発
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20J21732
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西奈美 卓 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | プリオンタンパク質 / Sup35 / 液-液相分離 / アミロイド / 添加剤 / 溶媒効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリオンドメインが形成する液滴の溶液状態の理解を深めるため、液滴形成に対する溶媒効果の網羅的な解析をおこなった。実験には、飢餓ストレスに応じて液-液相分離することが知られている酵母由来の翻訳終結因子であるプリオンタンパク質Sup35の天然変性領域を用いた。溶媒のpHやイオン強度などの基礎的な条件の検討から、Sup35の天然変性領域のうち、N末端側のプリオンドメインが液滴やアミロイドの形成に関わることがわかった。Sup35のプリオンドメインが形成する液滴に対して、天然の低分子化合物であるアルコールやコスモトロープ、カオトロープ、オスモライト、アミノ酸、および高分子クラウダーを幅広い濃度で添加したところ、液滴を抑制するものと促進するものにわかれることがわかった。液滴を抑制した添加剤のうち、球状タンパク質の変性によるアモルファス凝集の形成を促進するものがあり、溶媒効果によってタンパク質の液滴に特有のふるまいが起こることを発見した。 このように制御された液滴は、その後の成熟過程が異なる可能性があるため、チオフラビンT蛍光を用いてアミロイド化の様子を調べた。ほとんどの場合、液滴を抑制すると、アミロイドの形成も抑制されることが分かった。プリオンドメインが駆動する液滴は、アミロイド化と関連することが示唆された。さらに、プリオンドメインの液体性が観察された。プリオンドメインが形成する会合体は、高濃度の添加剤を加えても液滴のままであり、他の球状タンパク質や荷電性ポリマーとは異なる性質を持つことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母由来のプリオンタンパク質Sup35が形成する液滴とアミロイドの関係性を調査し、液滴の溶液状態の制御がアミロイド化に影響を与えることが明らかになった。様々な種類の添加剤を用いることで、プリオンドメインが形成する液滴の性質を見出した。さらに、タンパク質の新たな相分離状態を探索し、制御法を見出してきた。一連の研究によって、プリオンドメインが形成する液滴の溶液状態の理解が深められた。
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Strategy for Future Research Activity |
Sup35のプリオンドメインが形成する液滴の溶液状態とアミロイド化との関係性について、論文として公開できるよう実験を重ねる。プリオンドメインの液滴やアミロイドを安定化または不安定化する添加剤の探索をおこなう。同時に、液滴を含むタンパク質の溶液状態とそれに関わるタンパク質-溶媒間相互作用の統合的な分子メカニズムの解析を進める。
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