2021 Fiscal Year Annual Research Report
統計モデルを用いたマインドワンダリングの気づきの認知神経メカニズムの段階的解明
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20J21743
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
品川 和志 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | マインドワンダリング / 気づき / マインドフルネス / 脳波 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
現在取り組んでいることから,それと無関係な内的思考へと注意が移る現象をマインドワンダリング(以下MW)という。MWは覚醒時間の30~50%を費やしてしまうほどありふれた現象であり,課題遂行への悪影響や,注意欠陥多動性障害,うつ病などの精神疾患との関係が指摘されている。これらの点からMWを抑制することは,well-beingや臨床場面など様々な領域において重要視されている。MWの抑制手法として,自身のMWに即座に気づくことで,MWを中断し,MWに取り組む時間を減らすことが提案されている。しかしこのMWの気づきについては,自身の意識状態を間欠的にモニターするシステムがあると考察されているのみで,具体的な検討はされていない。そこで本研究では,気づきのプロセスを注意と記憶の観点から細分化し,その神経基盤の解明を目指す。同時に,MWの重要な要素である,気づきを含む思考間の遷移についても検討を行う。 本年度は,気づきのプロセスの注意の側面に関し行った実験を論文へまとめ,国際誌への投稿を行った。加えて,気づきを含む,思考間の遷移現象に関する脳活動特性を捉えるために必要となる,脳の事変的機能結合という解析手法について,現行の論文をまとめ,国内誌に投稿を行った。さらに,在宅でできる実験を行うことで研究を進めた。自身の状況に気づくというような,思考間の遷移には様々な要因が知られている。その要因の一つとして,現在の状況と思考の関連性が指摘されている。この関係を実験的にあきらかにするために,日常生活を送っている参加者に,ランダムなタイミングで,その時点での自発思考内容と,状況の関連性を問う実験を行った。さらに,このような結果の一部を,複数の学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスにより,実験実施に支障が出る期間があったが,研究遂行に必要な解析の習得,先行研究のレビューを行うことで,充当することができた。 本年度では,現在取り組んでいることから,それと無関係な内的思考へと注意が移る現象であるマインドワンダリング(以下MW)への気づきについて,脳波-fMRI同時測定による実験の遂行を予定していた。しかし,感染症対策の観点から,施設都合により実験を実施できなかった。一方で,この実験の前段階にあたる,脳波実験の結果をまとめ,国際誌への採択をすることができた。加えて,上述の同時測定実験で行う予定である,脳の機能的結合の,時間的変動特性を詳細に検討する解析手法についての知見を深めることができた。その結果として,この解析手法についての論文を国内誌に掲載している。上述のように,実験施設を使用する必要がある実験については計画が遅れてしまった一方で,在宅でできる実験を行うことで研究を進めた。自身の状況に気づくというような,思考間の遷移には様々な要因が知られている。その要因の一つとして,現在の状況と思考の関連性が指摘されている。この関係を実験的にあきらかにするために,日常生活を送っている参加者に,ランダムなタイミングで,その時点での自発思考内容と,状況の関連性を問う実験を行った。さらに,このような結果の一部を,複数の学会にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大により,実験を実施できない期間が長く,計画に遅れが生じた。そのため,当初の予定では昨年度に行う予定であった実験を本年度に行う。マインドワンダリング(MW)の気づきは,外的刺激提示により増加することが知られている。これは外的刺激提示により,MWへの注意配分量が減少することにより気づきが促されると考察されている。持続的注意研究の文脈では,対象への注意は一定ではなく,常に変化していることが知られている。この点から,MWへの注意配分量も一定ではなく変化しており,MWへの気づきには,外的刺激のみならず,MWへの注意配分の自発的な減少が関わることが考えられる。昨年度までの研究により,この仮説は指示された一方で,その際に,どのような脳領域が関与しているかについては定かでない。この点について,脳波-MRI同時測定を行い,その神経基盤の同定を行う。同時測定を行うことにより,脳波によって参加者の課題への注意配分量,MRIによってその時の脳の状態,注意配分量が変化した際の神経基盤を推定することが可能となる。参加者は50名程度を想定している。課題中,参加者には自身のMWに気づいた段階で報告を求める。MWの自己報告から遡って脳波成分,MRIによる脳状態の変化を解析し,気づきに関わる注意配分変化のプロセスを詳細に検討する。すでに実験プログラム,実験環境,解析プログラムは完成している。7月までに実験を終了させ,8月中に解析,その後論文化を行う予定である。同時に,MWの気づきに関わると考えられる生起過程についての検討も進める。MW研究では,課題集中,あるいはMW没入状態の脳活動の検討が行われてきた。これらの研究はMWの重要な要素である,思考間の遷移についての言及は行っていない。本年度ではこの点について,fMRIを用いた動的機能結合の推定を行うことで検討する。
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