2020 Fiscal Year Annual Research Report
ポリ酪酸ビニルナノ粒子を用いた抗アレルギーワクチンの合理的設計
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20J21770
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
LI SHUNYI 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 寛容性ナノ粒子 / 経口投与 / アレルギー治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の免疫療法は時間がかかり、また、抗原を直接使用するため、IgEと結合してアレルギー反応が起こることがある。抗原特異的な免疫寛容を効率的に誘導するために、ナノ粒子に抗原と免疫抑制剤や免疫寛容誘導剤を共内包した寛容性ナノ粒子が開発されている。また、ナノ粒子への抗原の内包は、B細胞抗原の暴露によるアレルギー応答を回避することができる。 当初は、オボアルブミン(OVA)を内包したOVA-ポリ酪酸ビニル(PVBu)ナノ粒子を調製し、ナノ粒子の経口投与により、腸内で酪酸(免疫寛容誘導物質)を放出し、Tregを誘導することでアレルギーを治療したいと考えていた。しかし、粒子から酪酸の放出率が低いことを見出した。in vivoの実験では、PVBuナノ粒子はTregを誘導する効率が低かった。これは、酪酸自体が弱いヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であり、免疫寛容を誘導するためには、ある程度の濃度の酪酸が必要であり、我々の粒子は酪酸を放出するのに十分な効率を持っていないためであると考えられる。 そこで、OVAと免疫寛容誘導剤を内包するPLGAナノ粒子を作製すると考えた。また、免疫寛容の誘導の効率を向上させるために、マンナン、ホスファチジルセリン(PS)などの樹状細胞を標的とするリガンドで粒子の表面を修飾する予定がある。 ポリマーを用いてつくたナノ粒子以外には、抗原を高分岐マンナンで被覆し、コアがジスルフィド結合で架橋されたナノ粒子を開発している。そして、この粒子による従来法よりも高い抗原提示能と高効率なTregの誘導、治療効果の向上を示すことで、アレルギー治療の現状の問題点を解決することのできるアレルゲン開発の研究となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度,動物実験で、イオン交換樹脂を事前に投与することで、抗生物質から腸内細菌叢を保護できることを確認した。in vitroの吸着実験により、マイナスの電荷を持つ抗生物質のセフォペラゾン(CEF)とアニオン交換樹脂の親和性が高く、腸液と同じ濃度の塩化物イオンや胆汁酸塩が存在しても、CEFに対する樹脂の吸着容量は大きく変化しないことを確認した。動物実験では、アニオン交換樹脂を事前に投与したマウスの糞中のCEF濃度は低くなり、樹脂を投与しなかったマウスの糞中のCEF濃度は高かった。また、樹脂はCEFによる腸内細菌の数や組成の変化を抑制した。これらの結果から、アニオン交換樹脂が腸内のCEFを吸着することで、ディスバイオーシスを防いでいると考えられる。これらの結果は論文にまとめられ、現在投稿中である。 また、免疫抑制剤と抗原を同時に抗原提示細胞に投与して、抗原特異的な免疫寛容を誘導する実験も行っている。現在、私たちはPLGAを用いてラパマイシンと抗原OVAを含むナノ粒子と高分岐マンナンで抗原を被覆するナノ粒子を作製している。また、これらの粒子が樹状細胞に取り込まれることが確認された。現在、免疫寛容のための粒子の誘導実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、オボアルブミン(OVA)を内包したOVA-ポリ酪酸ビニル(PVBu)ナノ粒子の開発をしたいと考えていたが、測定の結果により、粒子から酪酸の放出率が低いことを見出した。 in vivoの実験では、PVBuナノ粒子は制御性T細胞(Treg)を誘導する効率も低かった。そこで私たちは、生分解性ポリマーをキャリアとして用いて、経口投与可能な腸内のTregを誘導することができるナノ粒子を調製したいと考えた。私たちはキャリアとして乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を選び、OVAと免疫寛容誘導物質のラパマイシンを内包したPLGAナノ粒子の調製に成功した。この粒子の樹状細胞のターゲティングを向上させるために、次にマンナン、ホスファチジルセリン(PS)などの樹状細胞を標的とするリガンドで粒子の表面を修飾する予定がある。 また、高分岐マンナンにより抗原を被覆したナノ粒子を調製することで、副作用のリスクを回避しつつ、高効率でTregを誘導し、免疫寛容を成立させることができると考えられる。現在、マンナンで抗原を被覆したナノ粒子の調製は成功し、次に、その効果を細胞実験や動物実験で検証する予定がある。
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