2021 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙論的銀河形成シミュレーションを用いた宇宙重元素合成過程の研究
Project/Area Number |
20J21795
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垂水 勇太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 球状星団 |
Outline of Annual Research Achievements |
球状星団M15はr過程元素の量に分散が見られる特異な球状星団である。分散があることは30年ほど前より知られていたにもかかわらず、この分散の起源は明らかになっていない。この分散を説明し、球状星団の形成過程にせまる研究を行った。 球状星団の形成を銀河形成シミュレーションで行うのは難しかったが、2020年頃より超新星爆発でのフィードバックを工夫することで球状星団らしき星粒子のクラスターが形成されるようになった。その際鉄の含有量に分散が出ないことが「球状星団らしさ」の指標の一つであるが、M15はr過程元素含有量に分散が存在する(鉄含有量には分散が存在しない)。r過程元素は鉄に比べて元素合成の頻度が低く、銀河内での非均一性が大きいと考えられる。そこで、M15のr過程元素存在量の分散は星団形成のもととなった分子雲にあるものだと考え、銀河形成シミュレーションでそのシナリオを検証した。結果として、超新星爆発の0.1%程度の頻度で起こるイベントであれば、10程度の低金属量([Fe/H] < -2)球状星団のうち一つに分散が見られるという観測と概ね合致することが示された。比較的金属量の多い球状星団ではこの分散が見られないのは、銀河の成長が進み非均一性が小さくなるためだと解釈される。またこのことから、球状星団は比較的短期間の星形成イベントにおいて形成されたものと考えられる。 このシナリオを銀河形成シミュレーションを用いて定量的に調べたのは本研究が初である。本研究成果は論文誌に投稿し掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は論文を4本出版し、元々計画になかった球状星団についても研究を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは銀河内での物質混合を主に研究していたが、やはり起源天体の研究も行うべきであると考える。そのため中性子星連星合体の物質放出について、観測データから明らかにしていきたい。
|