2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J21812
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
清水 宏 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 遷移金属カルコゲナイド / ナノワイヤー / 一次元電子系 / 化学気相成長法 / インターカレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい低次元電子系の実現は、低次元系の基礎物理の解明や光、電子デバイスへの応用化のために重要な課題となっている。本研究では、ナノ構造の複合化による新しい低次元電子系の実現に向け、遷移金属カルコゲナイド(TMC)系ナノ材料に着目し研究を進めてきた。本年度は、昨年発見したWTe原子細線の凝集体で実現した二次元電子ガスの解析と異種元素のインターカレーションについての研究を行った。磁場を印可したときのWTe原子細線束の低温での電子輸送特性を解析した結果、低磁場なら弱反局在的な振る舞いを示すのに対して高磁場では古典的な金属の磁気抵抗に対応する応答を示すことや、WTeのコヒーレンス長が温度の-0.5乗に比例することを発見した。これは他の二次元電子系と同様の結果である。これらの結果より、昨年発見した量子振動の角度依存性と合わせて、TMC原子細線のリボン状束において二次元電子系が形成していることを強く示している。また、TMC原子細線の束に金属を真空蒸着することで異種元素がインターカレーションできることも発見した。Inを蒸着したWTe原子細線束の断面の電子顕微鏡観察により、ファンデルワールス力で凝集しているWTe原子細線の間に、蒸着前には観測されなかった原子が確認された。これにより、真空蒸着する金属を変えることで多様な低次元材料を作製できると考えられるため、今後のさらなる物性研究への展開が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年観測した二次元電子ガスの解析が順調に進んでいることに加え、WTeへの金属原子のインターカレーションに初めて成功した。この結果により新たな低次元材料を作製できると考えられるため、ナノ物質を組み合わせることで新たな電子状態の実現を目指す本研究において、当初の予想を超えるユニークな成果といえる。高品質試料の合成やデバイス作製プロセスも確立してきたことから、研究は順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度に引き続き、遷移金属カルコゲナイド原子細線の一種であるWTeの電子輸送特性を通じ、試料形状と電子状態の次元性の関係性について研究を行う。昨年度において、WTeに金属原料(In)を真空蒸着することで、蒸着する前は確認できなかった原子がWTeバンドル内にインターカレーションされることが示唆されている。このような異種原子との複合化を通じて細線間の距離が制御できれば、系の次元性を変調できる可能性がある。この仮説の検証に向け、本年度ではInを蒸着したWTeバンドルの構造解析と電気伝導特性を進め、WTe細線との物性の比較を行う。さらにInと同族の原子のインターカレーションとその物性測定も並行して進める。
|
-
[Journal Article] Formation of a Two-Dimensional Electronic System in Laterally Assembled WTe Nanowires2022
Author(s)
Hiroshi Shimizu, Jiang Pu, Zheng Liu, Hong En Lim, Mina Maruyama, Yusuke Nakanishi, Shunichiro Ito, Iori Kikuchi, Takahiko Endo, Kazuhiro Yanagi, Yugo Oshima, Susumu Okada, Taishi Takenobu, and Yasumitsu Miyata
-
Journal Title
ACS Applied Nano Materials
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Versatile Post-Doping toward Two- Dimensional Semiconductors2021
Author(s)
Yuya Murai, Shaochun Zhang, Takato Hotta, Zheng Liu, Takahiko Endo, Hiroshi Shimizu, Yasumitsu Miyata, Toshifumi Irisawa, Yanlin Gao, Mina Maruyama, Susumu Okada, Hiroyuki Mogi, Tomohiro Sato, Shoji Yoshida, Hidemi Shigekawa, Takashi Taniguchi, Kenji Watanabe, Ruben Canton-Vitoria, and Ryo Kitaura
-
Journal Title
ACS Nano
Volume: 15
Pages: 19225-19232
DOI
Peer Reviewed
-
-