2021 Fiscal Year Annual Research Report
欠陥ドープ単層カーボンナノチューブの構造特異的な発光特性解明と生体分子検出応用
Project/Area Number |
20J21818
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新留 嘉彬 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 近赤外発光 / 分子認識 / 励起子 / ソルバトクロミズム / ドープ / 化学修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
単層カーボンナノチューブ (SWCNT) は、生体透過性に優れた近赤外領域における発光を示すことから、バイオイメージングやセンシングをはじめとしたバイオ・医療分野における利用に注目が集まっている。近年、SWCNTが示す近赤外発光特性向上の手法として、局所化学修飾と呼ばれる欠陥ドープ技術が注目を集めている。最近、我々はこの局所化学修飾SWCNT (lf-SWCNT) が、ドープサイト周囲の溶媒環境の変化に対して敏感に発光特性変化を示すことを明らかにした。 令和三年度は、このlf-SWCNTが示す特異な周囲環境応答性に着目し、バイオセンシング応用を目指してドープサイトへのタンパク質結合による発光特性変化を検証した。ここでは、アビジンタンパク質を結合させるために、タンパク質認識部位であるビオチン基を導入したlf-SWCNT (lf-SWCNT-b) を合成した。続いて、本材料の環境応答性の基礎評価を行った。複数種の溶媒を用いてlf-SWCNT-bの周囲環境変化を導く実験を行ったところ、溶媒の誘起分極パラメーターの変化に応じてlf-SWCNT-bの発光エネルギーが変わることが分かった。lf-SWCNT-bにニュートラアビジンを混合した結果、lf-SWCNT-bの発光エネルギーは減少した(=発光波長の長波長シフト)。これは、ドープサイトにニュートラアビジンが吸着することで、周囲の誘起分極パラメーター値が増大したことによる寄与だと考えられる。さらに、このエネルギーシフト値は、ストレプトアビジンやアビジンを用いた場合には変化することが分かった。以上の結果より、lf-SWCNTのドープサイトの周囲環応答性を基に、ナノ界面へのタンパク質の結合現象ならびに吸着タンパク質の構造の違いを近赤外発光の波長変化から読み出せることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画に従って実験がおおよそ進んでいる。ビオチンを導入したlf-SWCNTの合成を行い、周囲の溶媒環境変化に対する発光エネルギーシフトから、その環境応答性が確かめられた。また、本材料がアビジンの結合によって発光エネルギー変化を示し、用いたアビジンの種類に応じてその応答性は変化することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、実験計画に従って現在進めている研究方針を継続する。これまでの成果を踏まえて、多様な生体分子を対象としたlf-SWCNTセンシング技術の開発を行う。ここでは、応用上有意なタンパク質の検出技術開発を目指して、他の生体分子認識系の適用を検討する。その中では、lf-SWCNTのドープサイト構造や可溶化に用いる分散剤 (ポリマーなど) の化学構造の最適化を行い、センシング能の向上を図る。これにより、lf-SWCNTを用いた多様な生体分子の高感度検出技術の開発へつなげる。
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