2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of pathogenic mechanism in autoimmune diseases targeting viral immune evasion
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20J21835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 俊輔 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 全身性エリテマトーデス / Invariant Chain / MHCクラスII分子 / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自己免疫疾患発症の原因と考えられるミスフォールドタンパク質・MHCクラスII分子複合体の形成に重要な分子であるInvariant Chainに注目し解析を行った。EBウイルス感染が全身性エリテマトーデスの発症機序と密接に関係していることが報告されてきた。EBウイルスの免疫逃避遺伝子の中には、MHCクラスII分子の発現量にはほとんど影響しないが、MHCクラスII関連分子であるInvariant Chainの発現を強力に抑制するものがあることが判明した。Invariant Chainと自己免疫疾患との関連を明らかにするために作成した誘導型Invariant Chain欠損マウスでは、抗ssDNA抗体、抗RNP/Sm抗体及び抗ヒストン抗体などの自己抗体を産生や腎臓糸球体における免疫複合体の沈着を呈し、SLEに類似した病態を示した。質量分析による解析にて、Invariant Chain発現量減少によって、自己抗原がMHCクラスII分子に結合することが明らかになった。これは当研究における、Invariant Chain発現量低下により小胞体内でミスフォールドタンパク質がMHCクラスII分子と複合体を形成するという仮説に矛盾しないものだった。さらに、シングルセルRNAシークエンスによって、誘導型Invariant Chain欠損マウスでは、B細胞におけるSLE関連遺伝子の発現量が上昇していることが明らかになった。また、自己反応性TCRおよびBCRのクローナルな増殖が確認された。以上より、EBウイルスの再活性化によってInvariant Chain発現量が低下し、小胞体内で自己抗原とMHCクラスII分子が複合体を形成する。その結果、自己抗原 / MHCクラスII複合体が、細胞表面に提示されることで免疫寛容の破綻をもたらすという自己免疫疾患発症モデルが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タモキシフェン投与によって後天的にInvariant Chainを欠損するマウスの解析と、EBウイルスがInvariant Chainに与える影響についての解析に取り組んだ。誘導型Invariant Chain欠損マウスは、自己抗体産生、ループス腎炎様病態、脾腫など全身性エリテマトーデス(SLE)に似た病態を呈していることが明らかになり、マウスの表現型の解析において十分な進展を認めた。さらには、シングルセルRNAシークエンスにより、SLE関連遺伝子の上昇および、自己応答性のB細胞受容体やT細胞受容体の存在を発見し、期待通りの研究の進展を認めた。 また、EBウイルス感染によってInvariant Chainの発現低下が起こることが示された。ウイルスの免疫逃避に関連する遺伝子が更なる発現低下を誘導しMHCクラスII分子の機能異常を引き起こしている可能性が示唆され、今後の研究が期待された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、Invariant Chain後天欠損マウスが、全身性エリテマトーデスに類似した表現型を呈すことが明らかになった。そこで、甲状腺や膵臓などの臓 器特異的にInvariant Chainが欠損するマウスを用いることで、臓器特異的な自己免疫疾患を発症するかどうか解析する。また、これらのマウスの疾患臓器細胞をシングルセルシークエンスにて解析することによって、異常な自己免疫反応や、抗原特異的なT細胞受容体およびB細胞受容体の存在について明らかにする。また、ウイルスと自己免疫疾患発症機序の関係について、EBウイルスの感染や再活性化によりInvariant Chain発現量が低下した感染細胞において、免疫沈降法と質量分析を用いることで、実際にどのような自己抗原が提示されているか明らかにする。また、それらの自己抗原とMHCクラスII分子との複合体に対して、全身性エリテマトーデス患者の血清中の抗体が反応するかどうか検証する。EBウイルスはマウスには感染しないが、EBウイルスの免疫逃避遺伝子であるBZLF-1はマウスのInvariant Chainも抑制することが明らかになった。そこで、後天的にBZLF-1を発現するトランスジェニックマウスを作成し、実際にBZLF-1発現によってInvariant Chain発現量が低下することで自己免疫疾患が引き起こされるかどうかを検証する。
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Research Products
(1 results)