2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J22044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大平 征史 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ゲル / DNA / 小角中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では空間と時間が制御されたゲルの創製を目的とし、4分岐高分子に相補的塩基配列を有する、DNAで架橋した網目を合成し、それを様々な観点(DNAの分子動力学、高分子鎖のナノ構造、機械的物性)から評価し、今まで不明瞭であった過渡的網目の分子的描像と力学物性の関係を明らかにする。本年度では、高分子網目を合成するためのプレポリマーの合成方法の確立と、並びにナノ構造の理論的な解析手法の確立に注力した。 プレポリマーは4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)にDNAを修飾することにより合成した。また、この修飾率の決定は逆相クロマトグラフィー(RPC)を用いて行われた。これは、Tetra-PEGの分子量が大きく、NMR測定では見積もり誤差が大きいためである。このRPCを使用したPEGの修飾率の測定は他の末端でも同様に測定できかつ、正確な修飾率を厳密に決定するのに重要である。RPCの手法については共同研究者らと論文として発表した。 高分子網目は2種のプレポリマーを混合することにより合成された。このゲルは小角中性子散乱(SANS)によってナノオーダーでの構造解析が行われた。SANS測定では、溶媒のH2O/D2O比を調整することにより、PEGのみの空間相関を観測した。得られたSANSプロファイルは、実空間上でTetra-PEG複数個の大きさのピークが観測され、既存の理論では説明が不可能であった。これはde Gennesが提唱した相関空孔という概念を使うことにより定量的に説明ができた。確立された散乱関数をDNA-PEG gelに用いることにより、散乱プロファイルを解析した。解析結果により、非常にゲル化に伴う不均一性に導入が非常に少ないことが判明した。そして、PEG鎖と水のエネルギー相互作用パラメーターは文献値と良く一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画では、高分子網目を合成するためのプレポリマーの合成手法の確立と、並びにナノ構造の理論的な解析手法の確立を目標としていた。 プレポリマーの合成は活性エステル末端を有する4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)に3’末端に1本鎖DNAを修飾することにより合成した。反応条件はpH、温度、縮合剤それぞれにおいて最適化され、最終的には末端修飾率が95%以上のものが収率80%以上で得られた。このことにより合成手法については今年度で確立された。 また、当ゲルは上記の手法によって合成された、相補的なDNAの塩基配列を有する、2種のプレポリマーを混合することにより合成された。ゲルのナノオーダーの構造解析は小角中性子散乱(SANS)によってが行われた。SANS測定では、溶媒のH2O/D2O比を調整することにより、PEGのみの空間相関を観測した。ゲル内の部分的な相関を抽出した研究は存在しなかったため、より構造な単純なゲル、具体的にはPEG鎖から成るゲルに対して部分的に重水素を導入した。このゲルに対して、de Gennesが提唱した相関空孔という概念をゲルに拡張することによって散乱関数は定量的に説明ができた。この確立されたモデルをにさらに拡張することによって、DNA-PEG gelの散乱関数を解析した。解析結果により、非常にゲル化に伴う不均一性に導入が非常に少ないことが判明した。そして、PEG鎖と水のエネルギー相互作用パラメーターは文献値と良く一致した。 これらの2つの結果により、本年度の研究は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
・様々なDNAの塩基配列を有したゲルを作製することによって、その力学物性を評価しDNAな結合エネルギーと力学物性の関係を明らかにする。 ・蛍光物質を修飾したDNAをゲル内導入し、そこに変形を加えることで、変形下でのDNAの解離挙動を調査する。
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