2020 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a novel serum diagnosis method for flaviviruses based on binding profiles of anti-flavivirus antibodies
Project/Area Number |
20J22269
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田畑 耕史郎 北海道大学, 国際感染症学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | フラビウイルス感染症 / 血清診断 / 抗フラビウイルス抗体 / 交叉反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「抗フラビウイルス抗体の結合プロファイルを用いたフラビウイルスの血清診断法の確立」は、交叉反応性を含めた抗フラビウイルス抗体の網羅的な結合を評価することにより、個体に感染したフラビウイルス種を特定する新規血清診断法の確立を目的とする。2020年度は、抗フラビウイルス抗体を検出するための抗原作製とモデル動物を用いた標準感染血清の作出を試みた。 抗フラビウイルス抗体のエピトープとして、非構造タンパク質1(NS1)と構造タンパク質であるエンベロープタンパク質(E)が報告されている。2020年度は、各フラビウイルス(デングウイルス1型から4型、ジカウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス)の組換えNS1タンパク質を作出した。 また、Eタンパク質は、フラビウイルス粒子上で二分子が相互作用することで、二量体構造をとることが報告されている。そこで二量体Eタンパク質(E dimer)を作製するために、Eタンパク質にタンパク質の共有結合を担うシステインを挿入し、in vitroでE dimerの作出に成功した。これまでにE dimerの発現は、限られたフラビウイルス種でしか報告が無く、本研究で得られた成果は抗フラビウイルス抗体の検出抗原としての応用に加え、フラビウイルスにおける構造タンパク質の新しい知見に繋がることが期待される。特に、E dimerはフラビウイルスに対するワクチン開発に用いられており、本成果は未だワクチンが樹立されていない、フラビウイルスのワクチン抗原としての応用が期待される。 さらに、各フラビウイルスの感染モデル動物を用いて、血清診断の標準感染血清を取得した。本年度以降、作製したウイルス抗原と標準感染血清を用いて、ウイルス感染によって誘導された抗フラビウイルス抗体の網羅的な結合評価を実施する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、フラビウイルス感染症の新規血清診断法の確立に必要な、抗フラビウイルス抗体検出のためのウイルス抗原作製、およびモデル動物を用いた標準感染血清の作出を実施した。抗フラビウイルス抗体を検出する抗原として、昆虫特異的フラビウイルスであるバルケジウイルス(BJV)を基本骨格とし、検出対象であるデングウイルス(DENV)やジカウイルス(ZIKV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ウエストナイルウイルス(WNV)などのフラビウイルスの膜タンパク質の一部を置換したキメラタンパク質、特にキメラウイルス様粒子(virus-like particle: VLP)を作出し、それらを検出抗原とすることを計画した。しかしながら、基本骨格となるBJVのVLPの発現が認められず、膜タンパク質のドメインを置換したキメラVLPの作出には至らなかった。そこで、計画を変更して、フラビウイルス粒子上に存在する二量体Eタンパク質(E dimer)の作出を試みた。先行研究において、E dimerをエピトープとする抗体は単量体のEタンパク質と比較し、交叉反応性が低く、ウイルス種特異性が高いことが報告されており、血清疫学のウイルス特異的抗体の検出抗原としての有用性が期待されている。現在、DENV1から4型に加え、ZIKV、JEV、WNVのE dimer作製に成功している。また、標準感染血清は各ウイルスに対応する動物モデルを用いて作出した。 以上の様に、本年度以降の研究へ繋がる成果を得られたことから、本研究計画は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度で得られた研究成果を基に、2021年度は標準感染血清が有する各ウイルス抗原に対する結合プロファイルを網羅的に評価する。取得した結合プロファイルを異なるウイルス種間で比較することで、各感染血清が示す特徴的な結合パターンの全体像を明らかにする。さらに、その包括的な結合パターンから感染したウイルス種の同定を可能にする感染血清のウイルス種特異的な抗体結合様式を見出すと共に、フラビウイルスの血清診断に最適な抗原の組み合わせを選抜し、抗フラビウイルス抗体検出パネルとする。また、標準感染血清を作出したウイルス株とは異なる株の同種ウイルスを感染させた感染血清検体を作製する。抗フラビウイルス抗体検出パネルを用いて、感染血清検体の結合プロファイルを取得する。取得した感染血清検体の結合プロファイルを、見出したウイルス種特異的な抗体反応様式と比較することにより、血清診断への応用の可能性を評価、および検討する。
|