2020 Fiscal Year Annual Research Report
錯体化学の配位構造を利用した分子性ハニカム構造の創造とそれに伴う量子物性の実現
Project/Area Number |
20J22404
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山 翔平 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 錯体化学 / 配位高分子 / 分子性導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は酸化還元活性な配位子を基にして錯体を合成し、その錯体の自己集積化によって二次元ハニカム構造の構築を目的として研究を行った。本年度においてはいくつかの酸化還元活性な配位子をターゲットにした錯体の合成を行ったが、ハニカム構造の構築にはまだ至っていない。 分子性導体部位を有する配位子を用いてMOFsを合成することで空孔と分子性導体部位を両立した構造である多孔性分子導体(Porous Molecular Conductors(PMC))の合成に成功したため、これを英語学術論文において報告した。この構造では従来のナフタレンジイミド(NDI)骨格をもつ配位子を予め化学的に還元してから金属錯体([Co(acac)2(MeOH)2])とゆっくり反応させることで、新しい多孔性分子導体(PMC-2)を合成した。この合成法は、電解結晶化が使えないような配位子と金属錯体の組み合わせにも適用可能な汎用性の高い手法といえる。acac配位子の導入によりナノ細孔のサイズが小さくなったことで、PMC-2は前年に報告したPMC-1よりも空気による酸化や風解に対して高い安定性を示した。 また、PMCの合成には至らなかったもののテトラチアフルバレン(TTF)骨格に2つピリジル基を導入したTTF-py2分子を用いて分子性導体の合成に成功した。TTFのトランス位に置換基がついた分子での分子性導体合成例は、これまでに一件のみしかないため珍しい例となっている。この研究では結晶構造中のピリジル基に由来するエネルギー安定化を計算することで、ピリジル基が結晶中で有意な水素結合を形成していることを示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は3回対称性を有するトリスキレート錯体を原料として二次元ハニカムシート構造を合成し、その新奇量子物性の開拓を行う研究であるが。研究の段階としては大きく分けて以下のようになる。1)トリスキレート錯体に用いる配位子の合成、および配位子の電気化学的物性の調査 2)トリスキレート錯体の合成、および錯体の電気化学的物性の調査 3)二次元ハニカムシート構造の合成 4)ハニカムシート構造の物性探索 現在までに2,3-トリフェニレンジオールやフェナントレンキノンなど、現在までに3つの配位子設計を行い、それぞれにおいて中心金属を第一遷移金属としたトリスキレート錯体の合成、およびその電気化学特性の調査を行った(研究段階2)まで)。その結果それぞれの錯体で酸化還元挙動が見られ、二次元ハニカムシート構造の原料として足り得ることを確認した。よって化学還元法や電解還元法により部分還元状態のハニカム構造構築を目指したが、目的のシート構造を有する結晶構造を得ることができなかった。理由としては結晶構造でシート構造を有するためには配位子間の軌道の重なりによる安定化が小さく、目的の結晶構造より安定な結晶構造が優先されて形成した、というものが考えられる。よって現在はよりπ共役平面が広い配位子を設計し、トリスキレート錯体を合成することを目的とし、研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、現在はジアザペリレン配位子を用いた錯体合成を検討しており、この錯体によるハニカム構造の構築を目指して研究を行っている。
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