2021 Fiscal Year Annual Research Report
15-16世紀モロッコにおけるスーフィーの思想潮流―前近代改革主義の視点から―
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20J22412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
棚橋 由賀里 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | スーフィズム / モロッコ / タリーカ・ジャズーリーヤ / 社会改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響で海外渡航調査が困難であったため、4月から翌年3月まで採用を中断して研究奨励費の繰越を行い、2022年度に使用した。 本研究の目的は、支配王朝の内紛とキリスト教勢力の侵攻に揺れた15-16世紀のモロッコにおけるスーフィーたちの思想と社会・政治情勢との 相互関係を、当時活躍したスーフィーであるムハンマド・イブン・スライマーン・ジャズーリーとアフマド・ザッルーク、および彼らの弟子たちの著作の分析から明らかにすることである。 2022年7月にモロッコのフェズ・マラケシュの文書館で写本資料の調査を行い、ジャズーリーおよびその弟子の著作の写本を収集した。 また、2022年6月のモロッコのラバトにおける調査(2020年分予算で行った)で収集したジャズーリーの弟子の1人であるアブドゥルワーリス・ヤルスーティーの著作の分析を行った。そこからヤルスーティーが、無知なスーフィーによる民衆の扇動を問題視し、望ましいスーフィーの修行法を論じていたことを明らかにした。さらに、すでに明らかになっていた、弟子の育成に熱心だった彼の人物像が、その問題意識と連動していたことを示した。これについては国内学会(2022年10月)と国際会議(2023年1月)で発表した。 2023年1月には、エジプトのカイロで行われたブックフェアに参加し、15-16世紀のモロッコに関する研究書の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査で大量の文献を収集することができたほか、その分析からジャズーリーの弟子のモロッコ社会に対する問題意識と問題への対処方法を明らかにし、研究発表を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャズーリーの弟子の著作が質量ともに想定よりも充実していたため、翌年度の研究および博士論文の対象はジャズーリーとその弟子のみに絞る。
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