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2021 Fiscal Year Annual Research Report

江戸期音楽界における吉原遊廓―音楽的実態及びその独自性を江戸文学の記述より探る―

Research Project

Project/Area Number 20J22465
Research InstitutionTokyo National University of Fine Arts and Music

Principal Investigator

青木 慧  東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2020-04-24 – 2023-03-31
Keywords吉原遊廓 / 江戸文学 / 音楽文化 / 音楽学 / 国文学 / 近世音楽 / 遊里 / 日本近世史
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、①本研究内での『異本洞房語園』関連作品の位置付けの検討、②吉原の音楽的実態の解明が主な実施内容となった。
①本年度は、庄司勝富『異本洞房語園』(1720)、石原徒流『北女閭起原』(1780-)等50作品前後の随筆を調査対象として選別した。随筆研究は、記述内容の多様性や数多の写本により書誌学的整理が困難である場合が多く、様々な随筆が深い検討がなされまま残されている。随筆研究の現状の再認識は、音楽学的視点から江戸文学の記述を再構築するという新たな方法論の提示を目指すうえで重要な土台となった。本年度は、中でも『異本洞房語園』関連作品の書誌学的検討と分析を主とした。『異本洞房語園』は、吉原関連情報が初めて網羅的に記された随筆であり、以降、石原徒流『北女閭起原』(1780-)、寛閑楼佳孝『北里見聞録』(1817)、喜多村信節『嬉遊笑覧』(1830)等の派生的な作品が創出された。本年度は、以上の作品の連関性に基づき当該作品間の記録の変遷を辿った。『異本洞房語園』関連作品群は、記録内容の豊富さや他作品への影響力により、本研究において極めて重要な位置付けとなる。
②客寄せの三味線音楽「すががき」の音楽的構造と変遷、寸劇芝居を伴う正月の「大黒舞」の吉原への導入時期と隆盛期、音楽的構造と変遷の解明が本年度の最も大きな成果である。「すががき」は、三味線の旋律のみの奏楽が定説とされていたが、1610年代の吉原開設当初から1700年代中期頃までは歌詞が付随していたことが明らかとなった。「大黒舞」にかんしては、宝暦年間頃(1751-)吉原に導入され、1790年代前後から短期間歌詞が付随するものの、1800年代半ばにかけ徐々に本来の大黒舞から形を変えながら衰退していったことが明らかとなった。以上は音楽文化の一側面ではあるが、吉原における音楽的実態の全貌を捉えるための一歩として重要な進捗である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

吉原の音楽的実態にかんする調査の進展に伴い、分析項目の再検討や絞り込み作業を行ったが、それらは本研究を達成するための妥当な変更点であり、吉原における具体的な音楽文化の一側面を解明する等、確実な進捗がある。昨年度は、吉原と並ぶ最大の娯楽であった歌舞伎との関連に着眼し、吉原への人や情報の往来や吉原内外の音楽の流通/伝播過程、文人と歌舞伎役者と聴衆との関連を解明するため、①「文学関係者(随筆作者)の言説」、②「歌舞伎関係者(歌舞伎役者・歌舞伎/歌舞音楽作者) の言説」、③「鑑賞者(歌舞伎鑑賞者/遊廓登楼客/文学読者)の言説」という3視点から、随筆や洒落本に限らない史料も用いて調査を進める計画を立案した。本年度は、①「文学関係者の言説」にかんする調査を進め、Ⅰ「音楽情報の記録(流行種目・歌詞等の具体的なレパートリーに関連する情報や、演奏シーン・演奏者・指導者・音楽教習の場等、音楽の担い手にかんする情報)」、Ⅱ「作者による見解(吉原や吉原周辺をめぐる音楽文化に対する作者の賞賛・批判等の見解)」という2点の分析項目を基に、随筆での記録分析を行った。調査対象とした随筆約50作品のうち、現在約半数が調査済みである。この結果、随筆における記録が、想定以上の多岐に渡る音楽情報を含んでいることが明らかとなった。以上のことから、各随筆作品の書誌学的検討や情報の体系化に多くの時間を要すると同時に、本研究を達成し得る十分な情報量を随筆から得ることが可能と予想され、本年度以降、①「文学関係者(随筆作者)の言説」の分析項目の重点化と調査の拡大に研究方針を定めることとした。また、本研究でも重要な位置付けとなる『異本洞房語園』関連作品は、これまで書誌学的整理が混然とした状態であったが、当該作品の連関性に着目しながら書誌学的検討が進展している点は大きな進捗である。

Strategy for Future Research Activity

今後は、①随筆における記録の抽出作業と分析の続行、②多岐に渡る情報の体系化とその方法論の検討、③分析対象の更なる絞り込みが主な実施内容となる。
①本年度は『異本洞房語園』関連作品の書誌学的検討と分析が中心となったが、今後は『異本洞房語園』関連作品に限らない他作品の分析に取り組む。同時に、『異本洞房語園』関連作品は、本課題において極めて重要な位置付けとなることが予想されるため、今後も未発掘である『異本洞房語園』関連作品の把握や書誌学的検討及び分析を最重要項目としながら、諸作業を進める。
②調査対象となる随筆作品には、歌詞、流行種目、音楽の付随する年中行事等、多岐に渡る情報が含まれており、各作品における情報の量や記録傾向は、随筆作者の趣味嗜好、社会的位置付けにも大きな影響を受けていると考えられる。随筆での記録とその背景をめぐる、複合的な条件・要素に配慮しながら、最適な情報の体系化法を模索する必要がある。
③吉原における音楽文化の変遷の傾向を明確に捉えるために、焦点を当てる音楽情報、期間、取り扱う随筆作品の絞り込み作業が必要であるか、慎重な検討を行う。特に、『異本洞房語園』関連作品は本研究で重要な位置付けとなる作品群であり、現時点では、『異本洞房語園』を起点とし、記述形態を踏襲し多くの情報を作品間で引き継いでいる関連作品において得ることができた情報に焦点を当てることが、音楽文化の変遷を明確に捉えるための最も妥当な方針であると考える。

  • Research Products

    (3 results)

All 2022 2021

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 洒落本と随筆にみる吉原遊廓の音楽文化ー江戸文学を用いた音楽学的研究をめざしてー2022

    • Author(s)
      青木慧
    • Journal Title

      東洋音楽研究

      Volume: 87 Pages: 1~22

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 江戸期随筆にみる吉原遊廓 ー音楽情報の記録活動に着眼してー2022

    • Author(s)
      青木慧
    • Journal Title

      東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化学専攻博士後期課程論文集

      Volume: 12 Pages: -

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 江戸文人がとらえた吉原遊廓とその周辺ー音楽情報を記録するということー2021

    • Author(s)
      青木慧
    • Organizer
      東洋音楽学会第72回大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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