2022 Fiscal Year Annual Research Report
江戸期音楽界における吉原遊廓―音楽的実態及びその独自性を江戸文学の記述より探る―
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20J22465
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
青木 慧 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 吉原遊廓 / 江戸文学 / 音楽文化 / 音楽学 / 国文学 / 近世音楽 / 遊里 / 日本近世史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題において調査を実施した随筆作品(享保5年(1720)から慶応4年(1868)までの刊行作品)は、総数約400作品にのぼる。そのうち、約200作品に国内の音楽に関する記述が見られ、更にそのうち約70作品に、吉原の音楽に関する記述が見られた。この結果は、吉原における音楽文化を検証するうえでの随筆作品分析の意義を示すものである。以上の作品の中には、楽律論等に言及した専門書のような作品も存在したが、芝居に付随する三味線音楽や遊里の音楽等の、より人々の実生活に密着した音楽文化を覚書きのように記述する作品が多くを占めていた。中でも、文人らの関心は「はやり歌」に強く向く傾向にあり、とりわけ、今日三味線小唄として認識されることの多い《岡崎女郎衆》、吉原での客寄せ時に奏楽される三味線音楽である見世すががきに付随する歌、「京島原の投節、大坂新町の籬節、江戸吉原の継節」という江戸期の音曲三名物の名としてのみ知られる継節に関する情報が、吉原におけるはやり歌の記述として最多であった。不明点の多い以上の事例について、記述内容の時系列に注意を払いその変遷を分析した。 その結果、江戸末期に至るまで音と歌詞が継承された《岡崎女郎衆》、江戸末期に至るまで歌詞は存続したが旋律は消失した見世すががき、江戸末期に至るまでに歌詞と旋律が消失したと思われたが、それまでとは異なる形で当時の社会に浸透していった継節という、異なる経緯をもつ3種の事例より、吉原という場において音楽文化がいかなる展開を見せたのか、「はやり歌」という視点からその独自性を捉えることができた。以上の事例には、今日の定説や認識との差異があり、特に歌詞か旋律どちらか一方、もしくは両者が失われた事例に関しては、より齟齬が拡大する傾向にあった。その背景には、随筆をはじめとした、学術的研究が時に軽んじられる史料への分析不足が要因として存在している。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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