2021 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカル反応を基盤とした高酸化度ジテルペンの収束的合成戦略
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20J22479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今村 祐亮 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 全合成 / タキソール / ラジカル反応 / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、分子間および分子内でのラジカル反応を用いた1-ヒドロキシタキシニンの全合成を、従来の37工程よりも短い総26工程にて達成した。その結果、高い反応性と官能基許容性を兼ね備えるラジカル活性種を用いる反応が、効率的な分子変換法として有用であることを実証した。本手法の堅牢性をさらに示すべく、より複雑で重要な生物活性を有する天然物であるタキソールの全合成研究に着手した。1-ヒドロキシタキシニンの全合成に用いた戦略を最大限活用するため、その合成中間体から分岐してタキソールを全合成する計画を立案した。昨年度までに合成した中間体からタキソールの全合成に向けて残された課題として、歪みの大きなオキセタン環の構築および、多数の酸素官能基共存下での位置選択的な官能基変換などが挙げられる。まず、オキセタン環の構築においては空気中の酸素や水に比較的安定で取り扱いが容易な有機亜鉛種を用いたカップリング反応を用いることで再現性良く炭素鎖を導入する手法を確立した。また、全合成の終盤においては多数の酸素官能基が共存する中での位置選択的な化学変換が求められる。これらの精密な変換は酸素官能基の周辺の化学環境の違いを活用した反応条件の最適化により効率的に行うことができた。最終的に尾部アシル基の導入と脱保護を経て、タキソールの全合成を総35工程で達成した。 これまでに本研究課題の遂行で見出した化学変換はタキソールの全合成のみならず、その類縁体や他の高酸化度天然物の合成にも適用可能な有用な手法であり、今後の研究課題の遂行に向けて重要な知見が得られたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに合成した中間体に至るまでの反応の条件を最適化し、安定的な基質の供給を可能にした。これにより供給可能となった合成中間体からタキソールの全合成に向けて残された課題として、歪みの大きなオキセタン環の構築および、多数の酸素官能基共存下での位置選択的な官能基変換などが挙げられる。まず、オキセタン環の構築においては空気中の酸素や水に比較的安定で取り扱いが容易な有機亜鉛種を用いたカップリング反応を用いることで再現性良く炭素鎖を導入する手法を確立した。また、その後の変換では4つのヒドロキシ基を位置選択的に変換する必要があった。これらの変換は、反応の順番、反応剤やルイス酸などの条件を適切に調整することで完全な位置選択性で達成できた。最終的に尾部アシル基の導入と脱保護を経て、タキソールの全合成を達成した。 以上の成果から本年度は当初の目標を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の合成に用いたフラグメントを改良することで、より直接的で効率的なタキソールの全合成を達成する。 また、タキソールの全合成において活用した、ラジカル反応を基盤とした収束的合成戦略を新たな合成標的に展開する。これらの研究課題を経て、複雑な高酸化度天然物を全合成するための一般性の高い合成戦略を確立する。
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