2020 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の雌雄生殖腺支持細胞における性的2型の可塑性と堅牢性の分子機序解明
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20J22630
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井松 健也 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 性分化 / 卵巣 / 精巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣や精巣、性器の発育に異常を示す疾患を性分化疾患と呼び、獣医畜産分野・医学分野において多数報告されているが、その原因究明のためには生殖腺の性分化機構の詳細解明が必須である。本研究では、哺乳類の性の決定におけるその安定性と破綻に関わる要因の解明を目指して、1)これまでの研究成果である卵巣の一細胞トランスクリプトーム解析で得られた遺伝子、2)本研究室で作出されたマウス系統を用いた新規性転換型であるXY生殖腺の卵精巣化モデル、の2つを用いたアプローチから研究を行っている。本年度は、前年度に引き続き、1)のメス型の支持細胞前駆細胞であるFOXL2陽性顆粒膜細胞の分化と不均一性に関与する因子の同定として、ゲノム情報解析を基にした、FOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる候補遺伝子の探索と、in situ hybridizationによる各因子の発現と発現領域の同定を行い、胎齢13.5日生殖腺において発現が確認される遺伝子を同定した。その中でも雌雄生殖腺で発現に違いがみられた遺伝子に関して、胎齢12.5日生殖腺においても同様にin situ hybridizationにより組織での発現と発現領域の同定を行うとともに、RT-PCRによるmRNAの発現確認を行い、FOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる有力な遺伝子として1遺伝子を同定できた。また、2)では、免疫組織化学をはじめとした組織学的解析を行い、XY生殖腺の卵巣化における組織変化について詳細な観察を行うことで卵巣化を確認した。さらにXY卵巣化過程において、経時的にサンプルを採材し、これらのサンプルに対してRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqを行うことで、経時的な遺伝子発現プロファイルを作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では大学への入構に制限がかかった期間があったことから、当初は実験の進行にも支障が出ていたが、その際にもRNA-seqデータの取り扱いに関する講義をはじめとしたデータ処理についての講義を受講し、今後の研究展開も踏まえた知識について理解を深めるなど、積極的に研究に関連する取り組みを継続した。研究成果については、FOXL2陽性顆粒膜細胞の分化と不均一性に関与する因子の同定では、今後の解析対象となる候補遺伝子のスクリーニングに関しては不十分な点も見受けられるものの、生殖腺での発現の雌雄差や生殖腺組織における発現に領域性が確認される遺伝子を見出しつつあることから、期待通り着実に解析が進んでいると評価できる。また、XY生殖腺の卵巣化過程の解析では、器官培養系の立ち上げとともに組織学的解析と遺伝子発現解析のためのサンプル収集を精力的に行った。その結果、当初予定の通りRNA-seqによる遺伝子発現データを取得していることから、期待通りの研究の進展がみられると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)のメス型の支持細胞前駆細胞であるFOXL2陽性顆粒膜細胞の分化と不均一性に関与する因子の同定では、今後FOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる有力な遺伝子として同定された1遺伝子に関しては、当初予定の通り、 CRISPR/Cas9法を用いた遺伝子の機能変異マウスの樹立について検討を行っていく予定である。一方、候補遺伝子のスクリーニングに関しては、現状解析した遺伝子数では不十分であると考えているため、今後も統計学的解析に基づいて遺伝子を絞りこみ、in situ hybridizationにより組織での発現を観察していく。 続いて、2)本研究室で作出されたマウス系統を用いた新規性転換型であるXY生殖腺の卵精巣化モデルによる性的安定性と破綻の要因解析では、今後、得られた遺伝子発現データに関して、既知の正常な卵巣分化の過程で発現が上昇する遺伝子との共通項を同定するとともに、RT-qPCRおよびin situ hybridizationにより卵精巣化過程における時空間的な発現パターンの解析を行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)