2021 Fiscal Year Annual Research Report
アデリーペンギンの採餌行動から推定する南極沿岸域のオキアミ3次元空間分布
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20J22632
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
渡邊 日向 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 南極 / アデリーペンギン / オキアミ / 三次元潜水行動 / 採餌行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、さまざまな海氷状況下におけるペンギンの採餌行動を比較することで、海氷環境の変動が南極生態系の高次捕食者であるペンギンにどのような影響を与え得るかその応答プロセスを明らかにすることである。計画の2年目にあたる本年度は、昨年度に引き続き海面に海氷が存在する海氷状況におけるペンギンの潜水データを解析した。特に、本年度は小型加速度計データを用いた捕食イベント (オキアミ分布の間接的な指標)の解析に取り組んだ。まず、ペンギンの頭部および背部に装着した2種類の加速度計から得られた加速度データからオキアミの捕食に関連すると考えられる特徴的な加速度ピークを便宜的にオキアミ捕食イベントとして定義した。次に、抽出した捕食イベントを三次元潜水経路上にプロットした。円を描いて再び潜水開始点近くに戻るような潜水経路の特徴を持つ潜水を対象に、潜水開始点から潜水中に到達した最遠点までの水平距離 (最大水平到達距離)に対して各捕食イベントがどの距離で生じたか調べた。その結果、多くの捕食イベントは最大水平到達距離付近で集中して起こった。これらの結果は、潜水バウト (連続した複数の潜水)中に、時間経過とともに各潜水の最大水平到達距離が徐々に増加するという傾向が、ペンギンの捕食圧の継続によってオキアミパッチの行動・分布変化 (沖合への逃避や分散)を引き起こし、さらにその変化に対してペンギンが行動を変化させている可能性があるという昨年度の考察を支持するものと考えられた。これまで、野外実験下において捕食者 (ペンギン) - 被食者 (オキアミ)の行動的相互作用の存在を示唆した例は少なかった。今後、海氷下で変動しやすいと考えられるオキアミ分布に対してアデリーペンギンがどのような採餌戦略をとっているのか考察を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実験機器の納品が遅れたことにより、当初計画していた捕食イベント解析に関連する実験に遅れが生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は捕食イベントの指標を加速度データのみを用いて便宜的に定義した。今後は、動物装着型小型ビデオの映像データを用いて実際のオキアミ捕食のタイミングを加速度ピークと照合する方法でより正確な捕食イベントの指標を抽出する方法を確立する。 来年度はとりまとめの年となるため、関連学会等で研究成果の発表を行う。
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Research Products
(2 results)