2020 Fiscal Year Annual Research Report
BMIデコーディング高精度化に向けた神経活動の局所的計測に基づく広域活動推定
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20J22686
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朝比奈 昂洋 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 神経科学 / 脳・神経 / 電極アレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,脳活動を計測することで外部機器を操作するBrain-Machine Interface (BMI)技術における,神経活動の読み取り・解読(デコード)性能の向上を背景とし,限られた計測範囲内の神経活動からより広範囲の神経細胞集団の状態推定を目的としている.直接計測されない神経活動をデコードに利用することができれば,より多くの神経細胞の情報を利用可能となることでデコード性能が向上すると考えられる. 令和2年度までに計画していた研究課題「神経細胞集団の推定理論の改善」について,複数の神経細胞集団が存在する場合に対応する拡張をおこなった.実際の脳においては多様な情報表現をおこなうために多数の神経細胞集団が活動する.理論を拡張することでこれに対応可能となった.また,培養神経回路網においても,全神経細胞の活動を観察することは困難であり,培養神経回路網の集団的活動を研究する上でも大きな意義がある.培養神経回路網に対して提案手法を適用し集団的活動を解析した結果をまとめ,国際学会で発表した(欧州神経科学学会大会,FENS2020 Virtual Forum, July 2020). さらに,令和3年度に計画していた研究課題のうち,高密度微小電極アレイを利用した実験を計画を前倒しして実施した.高密度微小電極アレイは約1000点で神経活動を同時記録可能であり,従来型のMEAより高い空間分解能・計測点数を実現している.高密度微小電極アレイを利用することで,約1000点の電極で神経活動を記録し,内50点の計測データからの推定値を実測データと比較して,推定手法の妥当性・有効性を検証した.この成果は国際学会(Society for Neuroscience, Global Connectome A Virtual Event, Jan 2021)で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度までに計画していた研究課題のうち,神経細胞集団の推定理論の改善については,複数の神経細胞集団が存在する場合に対応する拡張を施すという形で成果を得た.また,同計画のうち,推定理論の検証に用いる神経活動シミュレーション環境の整備も進め,理論の定量評価の準備を整えた.実際の培養神経回路網のデータおよびシミュレーションのデータから推定をおこない,複数の神経細胞集団を弁別可能であることを示した.上記の成果により,当初の研究計画における1年目までの内容を概ね達成したといえる. また,2年目以降に計画していた研究課題のうち,高密度微小電極アレイを利用した実験を計画を前倒しして実施した.高密度微小電極アレイによる神経活動の記録と,計測デバイスの変更に対応する理論・ソフトウェアの修正をおこなった.実験により理論の妥当性・有効性を支持する結果が得られた.以上の成果は当初の計画を前倒ししたものである. 以上より,現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はまず,昨年度に整備したシミュレーション環境を活用して,これまでに構築した神経細胞集団推定手法のシナプス伝達およびシナプス結合の推定精度を定量評価する.また,同シミュレーションにより,複数の神経細胞集団の活動およびそれにより発生するスパイク時系列を再現することで,提案手法によるシナプス結合推定値のパターン分類をおこない,推定手法が複数神経細胞集団を区別する能力を評価する. また,提案手法をBMIにおける神経活動デコードに利用した際の性能向上を評価するため,デコードを模した実験を令和3年度におこなう.デコードはパターン分類により行われることから,高密度微小電極アレイ上に培養した神経回路網から計測された活動からのパターン分類性能を,提案手法を用いる場合と用いない場合とで比較し手法の評価を行う.生体が外界からの感覚刺激に反応し行動する場合を想定した実験として,光刺激により活動が誘発されるように遺伝子操作をほどこした培養神経回路網の,刺激直後の応答パターンを分類する.提案手法による推定を用いる場合と用いない場合のパターン分類をそれぞれ行う.また,意識など内部状態により自発的に行動する場合を想定した実験として,自発活動からパターン分類を行う.高密度微小電極アレイの培養基板部分および培養細胞(実験動物・培養液等)は消耗品であり,また信頼性を確保するために複数回の実験が必要であるため研究経費で購入する.典型的な手法である発火率の統計的分類と比較して,提案手法を用いる場合は各神経細胞の発火タイミングや他の神経細胞の活動との時間的関係の情報から推定した神経細胞集団の特徴量を活用できることから,提案手法を用いる場合にデコード性能が向上することが期待される.デコード性能向上という成果が得られた後,学会誌論文として発表する.
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Remarks |
神保小谷研究室ホームページ http://neuron.t.u-tokyo.ac.jp/
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Research Products
(6 results)