2020 Fiscal Year Annual Research Report
毒性を考慮したp53標的放射線防護剤のスクリーニング手法の開発
Project/Area Number |
20J22753
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本橋 春香 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 機械学習 / 帰納論理プログラミング / ケモインフォマティクス / バーチャルスクリーニング / 放射線防護剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は毒性を考慮した放射線防護剤候補化合物のスクリーニング手法の開発である.2020年度は,スクリーニンング手法開発の前段階として,8-キノリノール類の細胞毒性および放射線防護活性の測定実験の結果を用いて,8-キノリノール類とp53タンパク質の結合に寄与する部分構造についての解析を行なった.解析手法として帰納論理プログラミング(Inductive Logic Programming: ILP)を用い,放射線防護活性をもつ候補化合物に共通する部分構造を抽出した.8-キノリノール類の骨格構造に着目し,ILPのモデルに相当する述語を定義した.具体的には,骨格構造に結合されている水素原子がどのような構造に置換されているかを表現する述語と骨格構造を形成する原子同士の結合関係を表現する述語を定義した.さらに細胞毒性の有無についての述語を定義した.放射性防護活性が高い33個および放射性防護活性が低い31個,計64個の8-キノリノール骨格を持つ化合物の背景知識(特徴量)を用いてルールの生成を行なった. 解析の結果,放射線防護活性の高い化合物に共通するいくつかのルールが得られた.得られたルールに当てはまる化合物を正事例と判断した場合,78%の精度で放射性防護活性の有無を正しく分類することができた.得られたルールを解釈すると,8-キノリノール骨格の複数の水素原子が,比較的大きな環構造を持たない構造によって置換されている化合物の放射線防護活性が高いことが示唆された.しかしながら,環構造を持たず分子量が同程度の部分構造を持つ化合物であっても放射線防護活性が低い化合物も見られ,そのような化合物の中には誤分類されているものも存在した.今後さらに述語の定義を見直し,より抽象度の高いルールの抽出を行うことで,部分構造や各置換基同士の関連性についても検証を行なっていく予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はp53タンパク質標的放射線防護剤の候補化合物の構造に関して,帰納論理プログラミングを用いた解析を行なった.結果として候補化合物の放射線防護活性に関連する部分構造についてのルールを抽出することができた.一方で当初目標としていた候補化合物とp53タンパク質の結合メカニズムの解明には至っておらず次年度以降さらにルール抽出モデルの改善が必要である.
|
Strategy for Future Research Activity |
対象とする放射線防護剤候補化合物の構造に関して,より具体的なルールを抽出するために,化合物の部分構造に関する多角的な情報および各部分構造同士の関係性を表現する述語の定義と,それにより得られたルールの評価を行う.またILPと深層学習を組み合わせることで放射線防護活性の推定モデルの性能向上を目指す.
|