2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規バレル型キラル有機リガンドを用いた無機ナノ粒子の微細構造制御と新機能開拓
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20J22759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 翼 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | キラリティ / 超分子重合 / オリゴチオフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
キラルなチオフェン縮環シクロオクタテトラエン(COT)はエナンチオピュアでは重合を起こさず、(-)体と(+)体の1:1混合によって系がラセミ化すると超分子重合を起こす。またこのモチーフは我々の過去の知見により、基底状態では光励起によって中央の8π電子系のシクロオクタテトラエンの平面状態が安定化される。その結果、エナンチオピュアのチオフェン縮環シクロオクタテトラエンは光照射によって立体が反転し、容易にラセミ化を起こすことがわかっていた。この特徴を活かし、本年度はエナンチオピュアCOTを用いた光開始型の超分子重合を検討した。興味深いことに光照射下においてはラセミ化が完了していても、重合が開始せず、遅延する傾向が確認された。光照射の時間を複数検討し、光照射停止後の重合曲線を理論モデルを用いてフィッティングを行った。すると核形成と伸長のいずれの速度定数もほぼ一致した。つまり光照射の時間に関わらず、光照射の分だけ重合が遅延する。ここで改めてCOTの光立体反転速度を測定すると、励起効率や励起寿命を考慮した立体反転速度は核形成速度より充分速いことが判明した。この現象を利用することで伸長反応に対する遅延効果を検討した。熱ラセミ化させたCOTが伸長して段階で光照射を行った。光照射前のフィッティングカーブを時間軸方向へ平行移動すると光照射停止後の重合曲線と一致した。つまり光照射によって超分子重合を一時停止する効果が明らかになった。ハミングバードのように光照射で激しく羽ばたくCOTモノマーにより、これまで不可能であった超分子重合の一時停止を実現した。ここでは一度重合したポリマーを解重合することなく、モノマーにのみ作用する初めての例であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
偶然発見された環状オリゴチオフェンはエナンチオピュアでは重合を起こさず、(-)体と(+)体の1:1混合によって系がラセミ化すると超分子重合を起こすことが判明した。この発見と過去の知見を組み合わせることによって、光によって超分子重合を一時停止することができる新規の現象を発見し報告する論文の採択が決定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
デザインした環状オリゴチオフェンは軸性キラリティを有し、(-)体と(+)体のエナンチオマーを持つ。予備的な検討によって、(-)体に(+)体を徐々に滴定した場合には吸収スペクトルが段階的に増強し、段階的な重合に成功した。一方で、円二色性スペクトルは本来段階的な減衰を示すと考えられるが、ラセミ化が進行するほど、分裂型のコットン効果を呈しながらスペクトルが増強され、ラセミ体において最大強度となる奇妙な現象を発見した。本年度はこれまでの研究で偶然に発見された環状オリゴチオフェンのキラル集合体の光学材料への応用を検討する。
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