2021 Fiscal Year Annual Research Report
単純アルカンの不斉C-Hアミノ化を実現する外輪型キラル二核ルテニウム触媒の開発
Project/Area Number |
20J22806
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
熊谷 悠平 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 不斉反応 / 外輪型二核ルテニウム触媒 / カルベノイド / 不斉HDA反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二核ルテニウム触媒から発生する求電子的な活性種が、二核ロジウム触媒から発生する活性種よりも高い求電子性を有するという仮説を検証するため、二核ルテニウム触媒とジアリールジアゾメタンを使った種々の不斉反応を検討した。その結果、触媒系によっては二核ルテニウム触媒の方が高い収率が得られることがわかったものの、一般的にはロジウム触媒と同等の収率になるという結果が得られた。ただし、検討の際に、ルテニウム触媒のジアゾ分解能がロジウム触媒よりも低いことを示唆する結果も得られており、より低温での比較実験ができていないため、活性種の求電子性がルテニウム触媒の方が高いかという点については別の触媒系での検討が必要になると考えている。 触媒の求電子性を高めるという点において、その触媒構造にも着目した。すなわち、二核ルテニウムアミダート触媒 mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFが既存の外輪型二核金属アミダート触媒とは異なる配位形式を有しているため、既存の二核ロジウム及びルテニウムアミダート触媒を凌駕する求電子性を有するのではないかと仮説を立てた。これを実証するため、既存の触媒系では困難な、4位にアリール基を有する求電子性の低いジエンを用いた不斉Hetero-Diels-Alder(HDA)反応を検討したところ、mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFを用いた際に良好な結果が得られることがわかった。二核ロジウム触媒Rh2(S-BPTPI)4では反応が進行せず、mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFとは配位子の配位形式が異なるcis-Ru2(S-BPTPI)4BArFでは低収率となった。mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFを使って、本反応の基質適用範囲を検討したところ、幅広いアルデヒド及びジエンに対して適用可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、二核ルテニウム触媒から生じる活性種の求電子性が高いという仮説を検証するため、ジアリールジアゾメタンを基質とする反応をいくつか検討した。その結果、反応系によっては、二核ロジウム触媒より高い収率で反応が進行する結果が得られたものの、多くの反応系ではロジウム触媒と同等の収率となることがわかった。ただし、ルテニウム触媒のジアゾ分解能がロジウム触媒に劣る可能性が示唆されており、より低温での比較実験ができていない。よって、この反応系ではルテニウム触媒から生じる求電子的活性種が、ロジウム触媒から生じる活性種より高い求電子性を持つかについては判断できないと考えている。 上記の結果に加えて、mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFを触媒とした、比較的反応性の低いジエンを用いた不斉HDA反応が幅広い基質に対して良好な結果を与えることがわかった。中心金属に対する配位子の配位形式が重要な要因となったと考えている。このように配位子の配位形式が触媒の活性に与える影響を知ることは、今後の触媒デザインにおいて重要な知見となる。単純アルカンの分子間不斉C-Hアミノ化反応を検討する際にも、配位子の配位形式に着目して触媒構造を最適化するなどして触媒の活性を高めるという手段を取ることができると考えられる。 以上の進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)二核ルテニウムアミダート触媒mer-Ru2(S-BPTPI)4BArFが他の二核ルテニウムアミダート触媒及び二核ロジウムアミダート触媒よりも高い求電子性を有しているという仮説を、計算化学の視点から実証すること 2)新規架橋型キラルリガンドを組み込んだ二核ルテニウム触媒の合成及び単純アルカンの分子間不斉C-Hアミノ化反応の検討の二つに注力していく。 1)に関しては、配位子の配位形式の違いが中心金属の求電子性に影響を与えているのかを確かめるために行う。 2)に関しては、本来今年度に取り組む予定であったが、ジアリールジアゾメタンを用いた不斉反応及び不斉HDA反応において良好な結果が得られそうだったので、次年度に先送りすることとなった。L-ホモセリンを原料として、架橋型キラルアミダート配位子を合成し、配位子交換によって新規キラル二核ルテニウム触媒を得る。触媒が合成でき次第、単純アルカンの分子間不斉C-Hアミノ化反応も検討していく。
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