2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳発生における成体神経幹細胞と上衣細胞の系譜選択機構の解明
Project/Area Number |
20J22817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大宮 英恵 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 成体神経幹細胞 / 上衣細胞 / BMP |
Outline of Annual Research Achievements |
神経幹細胞(神経系前駆細胞)は胎生期では神経管全体に存在して脳・脊髄を形成するが、そのほとんどは生後に消滅する。一方、成体においても少数の神経幹細胞のみが脳の限定された部位に残存し、新しく作られたニューロンは成体の学習や記憶・本能行動の制御に貢献する。では、どのようにして胎生期神経系前駆細胞のごく一部の特別な細胞のみが、成体まで残存する神経幹細胞として選ばれるのだろうか。 胎生期神経系前駆細胞は短期間に脳を作るために「素早く分裂」する。しかし当研究室において、その一部が胎生期の間に分裂頻度を下げ(「ゆっくり分裂」)、さらにその一部が成体神経幹細胞となることが示された(Furutachi et al., 2015)。しかし、このゆっくり分裂する神経系前駆細胞の中には将来成体神経幹細胞になる細胞だけでなく、成体神経幹細胞のニッチを構成する上衣細胞になる細胞も含まれる(Spassky et al., 2005)。さらに最近の研究により成体神経幹細胞と上衣細胞の一部は共通の前駆細胞から分化してくることがわかっている。では、どのようにしてゆっくり分裂する細胞の中から成体神経幹細胞の起源細胞と上衣細胞の起源細胞が選ばれるのだろうか? そこで本研究では成体神経幹細胞と上衣細胞の運命決定メカニズムの解明を目的とした。該当年度では上衣細胞の培養系を用いてBMPシグナルが上衣細胞の分化・成熟を抑制することを見出した。さらに現在、BMPシグナルが成体神経幹細胞と上衣細胞の運命系譜を分ける可能性をin vivoで検証中である。成体神経幹細胞と上衣細胞の起源細胞でBMPシグナルレベルが異なることを検証するためのBMPレポーターマウスも作成中である。次年度はBMPシグナルの上流・下流のメカニズムについてさらに検証を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上衣細胞を神経系前駆細胞から誘導する培養系を確立し、この培養系において上衣細胞の分化段階が進むにつれてBMPシグナルが減弱することがわかった。この培養系にBMPを添加すると上衣細胞の分化が有意に阻害された。驚くことに、BMPシグナルは上衣細胞遺伝子の最上流因子として知られるGemC1の発現も抑制していることがわかった。さらにBMP受容体の阻害剤によって上衣細胞関連遺伝子の発現が上昇し、上衣細胞分化も促進されることも見出した。以上の進捗から、本研究課題の進捗は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、BMPシグナルの下流で上衣細胞分化を抑制し、成体神経幹細胞の系譜を促進する因子候補を見つけており、今後はBMPシグナルに加えてそれらの因子が上衣細胞と成体神経幹細胞の系譜を分けるのに必要十分かを検討する。また、BMPシグナルが成体神経幹細胞と上衣細胞の起源細胞で違いが生まれるメカニズムについても作成中のBMPレポーターマウス等を用いて検討する。
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Research Products
(1 results)