2021 Fiscal Year Annual Research Report
半導体フォトニック結晶における光の高次トポロジカル相の発現
Project/Area Number |
20J22862
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 拓人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカルフォトニクス / バレーフォトニック結晶 / 光導波路 / シリコンフォトニクス / 光共振器 / フォトリソグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
導波路構造中に作製揺らぎや急峻な曲げが存在しても、光を高効率に伝搬可能とするトポロジカルフォトニクスの研究が近年盛んに行われている。本年度は空間反転対称性の破れた構造で構成されるバレーフォトニック結晶中に作製可能なトポロジカル光導波路に着目して研究を実施した。 まず本研究では、Bearded界面のバレーフォトニック結晶導波路構造を用いて周回型の光共振器を設計し、導波路中に含まれる急峻な曲げの数を変化させた場合の共振特性への影響について数値解析による検討を行った。その結果、曲げ回数が増加することに共振周波数がK点近傍の周波数を境に真逆の方向へシフトする現象を発見し、急峻な導波路曲げが群速度分散に関与していることを見出した。 そのほか、本研究では昨年度に引き続き、既存のCMOSプロセスと互換性を持つフォトリソグラフィ技術を用いた三角孔バレーフォトニック結晶導波路の実証を目指している。本年度はフォトリソグラフィ時に露光量を調整しながら我々が提案した補正フォトマスクパターンを用いることにより、一辺200-400 nm程度の三角孔をほぼ設計通りの寸法で作製する技術を確立させた。さらに、作製したデバイスに対して光学評価を実施し、CMOS互換プロセスにより作製したバレーフォトニック結晶導波路構造中における光伝搬を確認することにも成功した。次年度では、導波路曲げが存在した場合における光伝搬のロバスト性や、導波路中の伝搬損失や曲げ損失の定量的評価に関する検討を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に引き続き半導体スラブ上で実現可能なトポロジカルフォトニック結晶の一種であるバレーフォトニック結晶中の導波路に焦点を当てて研究を遂行した。まず、多数回の急峻な導波路曲げが含まれる周回型共振器を設計し、数値解析によってその曲げ回数を変化させた際の共振特性に与える影響について検討を行った。ここでは導波路曲げが群速度分散に関与する現象を見出し、その詳細を応用物理学会にて報告した。バレーフォトニック結晶導波路の曲げ部分における高効率な光伝搬現象は未だその詳細が議論されていないが、本発見はその現象を物理的に理解するうえで一つの興味深い知見といえる。 また、実験面ではフォトリソグラフィを用いたバレーフォトニック結晶導波路の作製と実証に取り組んだ。まずフォトニック結晶を構成する三角孔を作製する際、露光量を調整しながら昨年度提案した光近接効果を補正するマスクパターンを用いることで寸法・角の鋭さともに設計パターンと近い三角孔を作製する技術を確立させることに成功した。さらに、これを基に作製したデバイスに対して光学評価を行い、CMOS互換プロセスで作製したバレーフォトニック結晶導波路構造中における光伝搬を世界で初めて確認した。作製手法については本年度中に特許を出願しており、本研究成果は国際会議等でも報告を行っている。 以上の通り、本年度は昨年度に引き続き半導体スラブ型トポロジカルフォトニック結晶上の導波素子に関する研究を推進させたが、光集積回路としてバレーフォトニック結晶導波路を今後実用化に繋げるための重要な進展を生み出すことに成功した。そのため、本研究は順調に進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、フォトリソグラフィを用いて作製したバレーフォトニック結晶導波路の動作実証について、まず学術論文の形で報告することを計画している。そのうえで、同プラットフォームにおける曲げ損失や伝播損失の定量的な測定や、光回路としての高機能化(光分岐器など)の実証についても引き続き検討を進める。またスラブ型トポロジカルフォトニック結晶に関してこれまでに得られた知見を基に、新規光源素子の実現可能性についても調査を行う。
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Research Products
(6 results)