2020 Fiscal Year Annual Research Report
One-step purification and functional analysis of the chloroplast ATP synthase complex
Project/Area Number |
20J22917
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋山 健太郎 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / レドックス制御 / クラミドモナス |
Outline of Annual Research Achievements |
ATP合成酵素は、ミトコンドリア内膜やチラコイド膜上に存在し、電子伝達系によって形成された膜内外のプロトン電気化学ポテンシャル差を駆動力として軸を回転させながら、生体内のエネルギー代謝に普遍的に用いられるATPを合成している。葉緑体ATP合成酵素の場合、細胞内酸化還元状態に応じて活性が制御される「レドックス制御」を受けている。細胞内酸化還元状態は光合成が駆動するときに還元的になり、夜間は酸化的になる。したがって、葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御は光合成条件に適応した効率の良いATP生産に関与するものと考えられている。本研究課題では単細胞緑藻であるクラミドモナス由来の葉緑体ATP合成酵素を完全複合体として精製し、ATP合成活性を評価する実験系を確立して、最終的には、そのレドックス制御機構を解明することを目的として研究を行なっている。本年度は以下の研究を行なった。 ① 葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御に異常を持つ変異株の作製 葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御を担うγサブニットの遺伝子atpCの発現に異常があるクラミドモナス株に、正常あるいはレドックス制御に関する変異を加えたatpC遺伝子を導入することで、相補株を作製した。 ② 葉緑体ATP合成酵素のATP合成活性測定条件の検討 これまでの研究でHisタグを融合させた葉緑体ATP合成酵素の完全複合体の精製は達成していたが、ATP合成活性の測定結果は良好ではなかった。本年度の研究ではATP合成活性を適切に評価することができる実験系の構築を実現するため、まず精製時に加える安定化剤や活性測定時に使う緩衝剤の種類を検討した。その結果、葉緑体ATP合成酵素のレドックス状態によるATP合成活性の制御を明確に評価することができる実験条件を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御に異常を持つ変異株の作製 葉緑体ATP合成酵素への変異導入は様々な生物学的および技術的理由から困難であるとされてきたが、本年度の研究では単細胞緑藻クラミドモナスの遺伝子工学および分子生物学における長所を活かすことにより、特定のサブユニットに任意の変異を加えることを実現した。作製した変異株は本研究の課題である「レドックス制御機能の解析」に大きく貢献すると期待している。
② 葉緑体ATP合成酵素のATP合成活性測定条件の検討 本研究課題に着手する以前に確立した精製・活性測定手法を改善し、葉緑体ATP合成酵素が持つATP合成活性のレドックス制御を明確に評価できる実験系を構築することができた。本年度に確立した実験系は今後、精製予定の変異体にも適用できるため、新たな知見の取得に繋がることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
① レドックス制御に関する変異株の解析 本年度作製したレドックス制御に関する変異株を用いて、葉緑体ATP合成酵素のレドックス制御を担う新規因子の探索やレドックス制御に応答する速度の違いの評価をする。また、各変異株を光強度や明暗周期などを制御した様々な条件下で培養し、生育速度を比較することにより、レドックス制御の生理学的意義を検討する。
②レドックス制御に変異を有する葉緑体ATP合成酵素の精製 本年度作製したレドックス制御に関する変異株を既に作製済みの精製用タグを融合させた葉緑体ATP合成酵素を発現するクラミドモナス株と掛け合わせる。この交配によって、レドックス制御に変異がある葉緑体ATP合成酵素を精製することが可能になるため、本年度に構築・改善した活性測定系を用いて変異体タンパク質の生化学的解析を行なう。
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