2020 Fiscal Year Annual Research Report
他者と一緒に作業することが注意と学習に与える影響とその発達に関する検討
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20J22939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 千文 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 共同行為 / 注意 / 視空間情報 / 幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、欲しい物体を雑多な空間から探索することを、頻繁に行っている。最初は時間がかかっても、同じ空間で探索を繰り返すと、徐々に自分の欲しい物体に速くたどり着けるようになる。これは、何がどこにあるかという視空間情報が学習されることで、欲しい物体まで速く注意が駆動されるようになるためと考えられている。本研究では、さらに他者と一緒に探索すること、すなわち共同行為が、注意の制御や視空間情報の学習に与える影響を検討することを目的とした。以下の2つの研究を実施した。 1つ目の研究では、他者と異なる物体を探索する場面に着目した。自分が探索する物体だけでなく他者が探索する物体に関しても学習する可能性について検討した。具体的には、探索課題の途中でお互いの探索する物体を入れ替え、それまで他者が探索していた物体に注意が駆動される可能性を検討した。実験の結果、自分が探索する物体の位置に加えて、他者が探索する物体の位置に関しても学習されることを示す証拠が見つかった。これは、共同行為が注意の制御や視空間情報の学習を変容させる可能性を示す。この研究結果を第84回日本心理学会で発表した。 2つ目の研究は、成人を対象として自身がこれまでに行った研究を発達的に広げるために、幼児を対象として行った。先の研究では、他者と同じ物体を探索した際、一人で探索したときに比べて、視空間情報の学習による探索時間の短縮がより早くから見られた。現在はデータ収集の途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、他者と異なる物体を探索する場面を検討したところ、自分の探索する物体以外の物体を学習する可能性が示された。この結果は、他者と同じ物体に注意を向ける場面を検討してきた先行研究に、場面的な広がりを加えるものである。また、他者と同じ物体を探索する場面を、幼児を対象として検討した。まだデータ収集の途中ではあるが、これは先の研究に発達的な広がりを加えるものである。 さらに、先の研究の、共同行為が視空間情報の学習を促進した結果について論文を執筆した。これは原著論文としてActa Psychologica誌に受理された。これらの進捗状況により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
他者と異なる物体を探索する際、空間の中の、自分が探す物体の位置だけでなく、他者が探す物体の位置も学習される可能性を示す結果が得られた。今後は、実験パラダイムを吟味し、この結果をさらに検証する。また、幼児を対象とした実験のデータ収集を完了し、その成果について学会発表する。
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