2021 Fiscal Year Annual Research Report
他者と一緒に作業することが注意と学習に与える影響とその発達に関する検討
Project/Area Number |
20J22939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 千文 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Joint Action / Visuospatial Learning / Visual Attention / Preschool Children |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,他者と一緒に作業することが視覚的な注意の制御や物体の学習に与える影響とその発達を検討することである。これまでの研究で,成人では,友人と一緒に同じ空間の中から同じ物体を探索することを繰り返すと,一人のときよりも早くから探索時間が短縮することが分かった。これは,ある空間内の探索物の位置に関する学習効果の促進を示す。これに続き,以下の2つの研究を実施した。 1つ目の研究では,5,6歳の幼児を対象に,他者と一緒に同じ物体を探索する際に,成人と同様の促進が見られるかを検討した。参加児は,一人で,または親と一緒に探索をした。PC画面には,同一の探索画面が何度か参加児に知らされずに呈示された。その結果,同じレイアウトの探索画面が出てきたときには,ランダムに生成されたレイアウトの探索画面が出てきたときよりも,探索時間が短かった。この学習効果には,一人のときと親と一緒のときの間に統計的な違いは見られず,むしろ親と一緒のときの方が弱まるようなパターンが見られた。また,幼児が同年齢の友人と探索をしても,学習効果は観察されなかった。これについて,どのような発達プロセスが関与しているのかを,今後,さらに検討する必要がある。 2つ目の研究では,成人を対象に,他者と一緒に異なる物体を探索する際の,自他の探索物に関する学習を検討した。2人に同じPC画面から別々の物体を探索してもらった後に,物体を一つずつ呈示し,それが先に出てきた物体か否かを判断してもらった。すると,先に出ていたが誰も探索しなかった物体に比べて,自分の探索物と,さらに他者の探索物に関して,記憶成績が高かった。これは,他者と一緒に別々の物体を探すときに,他者と一緒に同じ物体を探すときや一人で一つの物体を探すときと異なる,注意を向ける対象や学習の対象の広がりがもたらされる可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、幼児が他者と一緒に同じ物体を探索する場面を検討したところ,成人とは異なる結果が得られた。この結果から,自分と他者が一緒に作業をするときの空間に関する学習には,5,6歳の段階では達成されにくい,何らかの発達的な能力が関与する可能性が示唆された。また,成人が他者と一緒に別々の物体を探索する場面を検討したところ、自分の探索物だけでなく他者の探索物も学習されることが分かった。この結果から、他者と一緒に別々の物体を探すときに,他者と一緒に同じ物体を探すときや一人で一つの物体を探すときと異なる,注意を向ける対象や学習の対象の広がりがもたらされる可能性が示された。これらの進捗状況により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児が他者と一緒に同じ物体を探索する場面を検討したところ,成人とは異なり,一人で探索する場面では見られたはずの,ある空間内のある探索物の位置という空間に関する学習効果が,減衰した。今後は,自分と他者が一緒に作業をするときの学習に,どのような発達的な能力が関与しているのかを検討し、その成果について学会発表する。
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