2020 Fiscal Year Annual Research Report
量子真空の基礎論と現象論による曲がった時空の場の量子論の検証
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20J22946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上田 和茂 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Unruh効果 / Dirac方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Minkowski時空を背景時空とするRindler領域とKasner領域におけるDirac場のスピノル解の解析接続と、Mathematicaを用いた解の検証を行った。その際、各領域のDirac方程式を独立なものとして解析接続を行うと、各領域ごとに位相自由度が残ってしまうことが分かった。そこで、まず背景時空のMinkowski時空のモード関数(スピノル)を導出し、それを局所ローレンツ変換によって各領域の座標軸に沿うような形のスピノルに変換することでこの問題を回避することが出来ることに着目し、各領域のモードの対応関係を整理した。以上の二つの方法の計算結果を比較して、無矛盾であることを確かめた。 等価原理に基づくと、この解析で得られたDirac方程式の解を用いて記述されたDirac粒子は、重力下にある粒子の状態を表していると考えることもできる。そこで、一様加速度系(Rinldrer時空)のDirac方程式をMIT境界条件と呼ばれる境界条件の下で解き、エネルギー固有値を導出することで、粒子のエネルギー状態に相対論的補正がどの様に働くかを他の共同研究者とともに議論した。 上記二つの議論を論文にまとめ、投稿することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で時期的な遅れはあったものの、Rindler時空及びKasner時空におけるDirac場の解析を概ね完了することが出来た。 また、当初の計画とはやや異なるが、他の研究との関連により、量子真空の解析を新たな研究に応用することができた。その点については予想以上の成果が出来たと言えるため、全体としては概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
量子真空の基礎論についての研究では一定の成果が得ることが出来たため、翌年度は回転ブラックホール周りの真空崩壊についての議論を深めたいと思っている。例えば、次元の異なる時空でブラックホールの回転の影響を議論した場合に、4次元の場合と比べてどのような違いが生じるのかは大変興味深い。 そこで翌年度は、5次元のAdS時空中に着目し、共同研究者と共に議論していきたいと思う。
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