2021 Fiscal Year Annual Research Report
量子真空の基礎論と現象論による曲がった時空の場の量子論の検証
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20J22946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上田 和茂 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Kerr時空 / AdS時空 / 高次元ブラックホール / 準固有振動 / 真空崩壊 / 膜宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、量子真空の安定性に関連して、共同研究者らと共に下記の研究をおこなった。 1.Myers-Perryブラックホール周りによる真空崩壊現象の理論解析 以前から進行していた4次元回転ブラックホール周りの真空崩壊現象の応用として、5次元時空のブラックホールによって生じる偽真空泡のダイナミクスをIsrael接続条件から導出し、5次元時空での真空の寿命の変化の回転パラメータ依存性を調べた。特に、5次元時空の重力場の作用と、偽真空泡の周りに局在するスカラー場のEuclidean作用を計量の成分によって記述し、Mathematicaによって様々なパラメータ領域でdecay rate(の指数部分)がどの様に変化するかを調べた。 2.5次元Kerr時空におけるスカラー場の準固有振動モードの数値解析 上述の研究の関連研究として、5次元Kerr-AdS時空中のスカラー場の方程式の解をブラックホールのouter horizonとAdS boundary上の境界条件のもとで数値的に導出し、複素振動数の実部と虚部の値を調べることで、スカラー場が安定に存在するパラメータ領域(ブラックホールの回転などによりエルゴ不安定性が生じないパラメータ領域)を調べた。今後は(Higher Overtoneを含めて)まだ調べていないパラメータ領域でさらに詳細な解析を行いたいと考えている。また、上述の1.のテーマとの関連で、5次元宇宙中における真空の安定性と境界条件つきの場の方程式の解の安定性を比較する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度のUnruh効果に付随するRindler時空の場の量子論に加えて、今年度はKerr-AdS_5時空に着目して、古典的な観点(BH準固有振動)と量子的な観点(真空崩壊現象)から真空の安定性を調査した。その過程で、5次元時空中の真空泡として4次元の発展式を記述し、5次元時空の回転の自由度を含んだFriedman like方程式を導出することが出来た。この点においては、計画時点の想定よりも多くの発見があったが、観測量による検証についての議論は課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
量子真空に現れるエンタングルメント構造などは、観測による検証を想定しづらい側面があるため、次の年度はインフレーション期の原始重力波など、将来の観測が期待できる物理量を議論の起点とする。その過程で、Bunch Davis真空の時間発展を追うことで、量子真空の性質に関する現象論的な検証を議論する。
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