2020 Fiscal Year Annual Research Report
Clarification of the Magnetically Driven Mechanism of AGN Jets: Prediction of Polarization Images through Radiative Transfer Calculation
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20J22986
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
恒任 優 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ブラックホール / 活動銀河核ジェット / 偏光 / 輻射輸送 / 数値シミュレーション / 一般相対性理論 / 偏波 |
Outline of Annual Research Achievements |
EHT (事象の地平面望遠鏡)により楕円銀河M87の中心核である超巨大ブラックホールの影が史上初めて撮影されたことで、ブラックホール研究に新たな地平が拓かれた。我々はこの好機にあたり、M87の中心ブラックホールから銀河スケールの距離まで噴出するプラズマ流、”活動銀河核ジェット”の駆動機構を理論的アプローチから調べることを考えた。 そのために我々は、軸対称の一般相対論的磁気流体力学(GRMHD)シミュレーションデータに基づき、独自に開発した一般相対論的輻射輸送計算コードを用いて偏光画像を作成した。このジェットの理論モデルに基づく予測画像においては、偏光成分の大部分を占めると考えられてきた直線偏光ベクトルが、ブラックホール付近での放射後に外側の降着円盤内でファラデー回転を受け、元々持っていた情報を失う可能性が提示された。一方でこれまでは微弱であると考えられてきた円偏光成分が、ブラックホール付近の高温プラズマで直線偏光からのファラデー変換によって増幅し、磁場やプラズマの情報を保って観測される可能性も見出された。 さらに我々の銀河系の中心核であるいて座A*(エースター)についても同様に偏光画像を理論予測し、上のような円偏光成分の増幅がこの天体でも起こりうること、加えて円偏光成分の符号の正負(右周り円偏光と左回り円偏光)がブラックホール付近の降着円盤中のらせん状磁場を反映した形で現れることを提示した。この要因は、いて座A*ではM87と異なり観測可能な大規模ジェットが存在せず、放射が細く絞られたジェットより幅広い降着円盤で起こることである。 以上のように我々は本年度の研究を通じて、EHTによる偏光画像観測で得られる特徴を2つの主要ターゲット天体に対して予測した。今後の実観測でこのような磁場形状を反映した特徴が得られれば、活動銀河核ジェットの磁場による駆動機構の解明に一気に近づくことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では研究計画にあった「多波長観測を念頭としたGRMHDモデルに基づく偏光画像予測」を数値シミュレーションによって実行し、「M87といて座A*という二つの活動銀河核についてジェットの有無という観点から偏光特徴を比較し予測する」ことができた。さらに、理論予測画像を提示するにあたっては、「超長基線電波干渉計(VLBI)の実観測における角度分解能やノイズ、加えていて座A*においては星間散乱により画像がぼやける効果などを考慮し、現実的な模擬観測画像として提示」した。結果として、計算から明らかにした偏光特徴が現行の装置で十分検出可能であることがわかった。 研究成果の共有については、コロナ禍によって多くの研究会が対面開催を中止するという事態はあったが、国内外を問わず多くのオンライン学会に参加し、チャットでの議論などオンラインならではの取り組みを通じて成果を広く宣伝することができた。 以上のような進展があったことから、本研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を踏まえ、軸対称2次元のGRMHDモデルに基づいて示された先の結果を今後は3次元のGRMHDモデルによる理論偏光画像と比較し、モデルの3次元的な特徴が画像に与える効果を明らかにする。さらに、GRMHDモデルにおいて未確定となっている陽子と電子の結びつきの強さや、非熱的な分布を示す電子の寄与についても掘り下げる予定である。また、将来のEHTなどによる観測結果の長期間の蓄積を踏まえて、モデルの時間変動による偏光画像の時間変化(ムービー)についても調べる。これらの理論的アプローチをM87やSgr A*などの近傍活動銀河核や、3C 273などのクエーサーについても行うことで、活動銀河核ジェットの統一描像や進化シナリオの解明を目指す。
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Research Products
(3 results)