2020 Fiscal Year Annual Research Report
動的境界条件下における粘性項付きカーン・ヒリアード方程式の解析
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20J23013
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
香川 渓一郎 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | カーン・ヒリアード方程式 / 斉次ディリクレ境界条件 / 極大単調作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
斉次ディリクレ境界条件下での粘性項付きカーン・ヒリアード方程式の初期値問題の解の存在と一意性,平滑化効果を示した研究成果が国際研究誌 Advances in Mathematical Sciences and Applications に出版された.この論文では非線形項を極大単調項と,局所リプシッツ連続関数や負の極大単調作用素を含むような摂動項に分解し,同種の問題を扱った先行結果から大幅に拡張された非線形項の下で解の存在を示した.また非線形項を極大単調項と大域リプシッツ連続項の和に分解する条件の下で解の一意性を示した.これに続く研究成果として,斉次ディリクレ境界条件下で粘性項付きカーン・ヒリアード方程式の初期値問題の解をアレン・カーン方程式やカーン・ヒリアード方程式などの解に漸近させる極限問題を扱った論文を投稿中である.また Advances in Mathematical Sciences and Applications に出版された初期値問題の適切性の結果と,投稿中の極限問題に関する結果について,非線形発展方程式セミナー@KUE で講演を行った. この成果は本研究課題の主題である境界と内部で粘性項付きカーン・ヒリアード方程式を満たす初期値問題の適切性を非線形項を極大単調項と摂動項の和に分解する条件の下で考察していく上で足掛かりとなる. また先行結果にある様々なタイプの動的境界問題に関して調査,研究を進めていく中で,粘性項付きカーン・ヒリアード方程式の近似になるような新たな方程式を導入することで,問題の適切性を考察する端緒を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により講演計画に大幅な変更が生じた.計画にはなかった国内の研究集会での講演を行ない,論文1本が出版され,1本が投稿中である.これらはこの研究課題で主眼とする動的境界問題への足掛かりとなるディリクレ境界値問題に関する結果である. 当初の計画ではさらに内部と境界で粘性項付きカーン・ヒリアード方程式の初期値問題の適切性に関する結果を得るところまで目指していたが,令和2年度は問題の適切性を考察する糸口となるような新しいモデルの候補を得るに留まった.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は本研究課題の主題である境界と内部で粘性項付きカーン・ヒリアード方程式を満たす初期値問題の適切性を調べる.具体的には前年度で得られた新たなモデルに基づく議論の詳細を詰め,論文にまとめる.これが解決し次第,領域内部や境界における方程式の係数に関する極限問題に取り組む. この新たなモデルに限らず,動的境界問題が物理的にどのような状況に対応するかといった点や内部と境界をつなぐ接合条件の解釈など,数理モデルとして理解するには不明瞭な点がある.これらの物理的意味付けを受入研究者との議論を基に考察を進めるとともに,動的境界問題の数値シミュレーションに並行して取り組む.手始めに簡単な動的境界問題での数値シミュレーションも行ない,解の振る舞いの観察を通じて動的境界問題の複眼的な理解を得ることを目指す.
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Research Products
(2 results)