2021 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学に基づく非平衡・動的界面物性導出と合金組織形成過程の原子論的理解
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20J23028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 健祥 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 固液界面エネルギー / メタダイナミクス / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,原子スケールの情報のみから直接的に固液界面物性を導出する手法の確立を目的としている. 令和3年度では,特に純金属固液界面エネルギーの温度依存性の検討をした.これまでに実験および数値解析手法により様々な金属材料に対して,凝固および融解により固液界面の移動しない平衡温度下の固液界面エネルギーの導出が取り組まれてきたが,金属材料の結晶成長は非平衡温度下で進行するため,非平衡温度下の固液界面エネルギーの理解が不可欠である.そのため近年,非平衡温度下の純金属固液界面エネルギーに対しても導出が取り組まれており,これまでに平衡温度より十分低い温度範囲では,温度が上がるにつれ固液界面エネルギーは増加する正の相関が報告されている.一方で,平衡温度近くの温度範囲では,温度が上がるにつれ固液界面エネルギーは増加する正の相関の報告もあれば,温度が上がるにつれ固液界面エネルギーは減少する負の相関の報告もあり,平衡温度近くの温度範囲での固液界面エネルギーの温度依存性は未だ明確ではない.そこで令和2年度では,純ニッケルおよび純鉄を対象に平衡温度近くの温度範囲において固液界面エネルギーの温度依存性を求め,温度が上がるにつれ固液界面エネルギーは減少する負の相関が得られた.Spaepanの先行研究では,固液界面近傍の液相原子のエントロピー減少効果および融解エントロピーの関係性から固液界面エネルギーの温度依存性は温度範囲に関わらず正の相関となるとされていたが,本研究では,固液界面近傍の固相原子のエントロピー増加効果も考慮し,固液界面におけるそれら3つのエントロピーの関係性により固液界面エネルギーの温度依存性が定まると考察した.そして,その内容を論文として出版するとともに,学会で口頭発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平衡温度近くの温度範囲での固液界面エネルギーの温度依存性を十分に考察した先行研究はほとんどなかったが,本研究では,固液界面近傍での固相原子のエントロピー増加効果に着目し,固液界面エネルギーの温度依存性が負の相関となる理由を考察することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度では,先行研究において温度依存しないと仮定されていた純金属融解エントロピーの温度依存性についても導出を試みた結果,純ニッケルおよび純鉄どちらも温度が上がるにつれ融解エントロピーは増加する正の相関が得られた.今後はこの内容について考察をし,論文としてまとめる予定である.
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