2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J23066
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 拓馬 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 力学応答性高分子 / メカノクロミズム / メカノフォア / デンドリマー / 高分子合成 / 高分子反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
力学応答性高分子は、高分子材料に多様な機能の付与を可能にする刺激応答性高分子の一つとして近年精力的に研究が行われている。本研究では、一般に活性の低いバルク高分子中の力学応答性分子骨格 (メカノフォア) の活性を向上させることを目的に、高分子構造とメカノフォアの応答性の関連について調査を行った。力学的刺激により安定なラジカル種の生成に基づく青色を呈するメカノフォアであるジアリールビベンゾフラノン (DABBF) 骨格を利用した。これにより視覚的変化に加え、電子スピン共鳴測定を用いた発生ラジカルの定量による比較評価を可能とした。本年度は粉末試料のすり潰しに対する力学応答性の比較を行った。 エステルやアミド基を表面に有するデンドロンと4官能性DABBF誘導体とのクリック反応によりDABBF骨格をコアに有するデンドリマーを作製した。過去に作製したベンジルエーテルを表面官能基とするデンドリマーと併せて、すり潰し試験による各種デンドリマーの力学応答性の調査を行った。その結果、デンドロンユニットのサイズや表面の極性基が力学的刺激の伝達効率に影響を与え、コアに位置するメカノフォアの力学応答性が系統的に変化した。特にアミド結合の導入によって力学応答性が飛躍的に向上することを見出した。また、直鎖状高分子の力学応答性との比較を通じて、高分子トポロジーの効果があることも明らかにした。加えて、エステル・アミド以外の表面官能基を有する力学応答性デンドリマーの合成にも成功しており、中でも水酸基を表面とするデンドリマーは更なる官能基変換や重合反応の足場としての利用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が停止した期間があったものの、準備期間に作製を進めた種々のデンドリマーの特性評価が順調に進み、その成果が学術誌に掲載されるに至った。今年度の計画にあった「デンドリマーの結合交換特性評価」にはやや遅れが生じているが、本研究の過程で合成した架橋高分子が、最終的な目標である高分子材料中のメカノフォアの高感度化に繋がる興味深い知見を見出した。当初の計画の一部変更は生じたが、新規現象に関する解析も順調に進行しているため「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
室温で平衡状態にあるDABBFは高い力学応答性を示すものの、結合交換特性の調査やラジカル重合への展開には不適切であった。そこで今後は、室温での安定性に優れたメカノフォアを用いて結合交換特性の評価や力学応答性架橋高分子の高感度化の検討を進める。当初の計画と並行して、本研究の過程で見出したメカノフォアの高感度化に大きく寄与する現象についても調査を行う。また、計算科学的手法を取り入れ、熱的・化学的な安定性に優れたメカノフォアの改良を進める。
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