2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズの金属キラル構造による単層の光アイソレータ
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20J23133
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
古澤 岳 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | キラルメタマテリアル / 光学フィルタ / マイクロナノ加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属ナノキラル構造が持つ可視光領域の強い円二色性を応用し、片側円偏光吸収による薄型・単層の光アイソレータの実現を目標に取り組んでいる。 本研究では動作理論の構築と実デバイスによる原理実証を並行して行っている。動作理論構築では、有限要素計算の電磁場解析を用いて、片側円偏光吸収が発生する有望な条件を探索し、構造の形状と光学特性の関係を調査している。実デバイス製作は、一般的なマイクロナノ加工で用いられるリフトオフ等を用いて行う。片側円偏光吸収特性の実測評価は、左右円偏光それぞれの吸収率、透過率、反射率を計測する。また、ミラーの反射光に対して、反射防止効果を計測する。 2021年度では動作原理の実証に向けて製作するデバイスの有望条件を、シミュレーションを用いて探索した。シミュレーション調査では、金属キラル構造の動作への理解が深めながらデバイス設計を行うことができた。デバイス設計と並行して実デバイス製作にも取り組んだ。可視光で動作するデバイスの製作には、非常に難易度の高い立体的なナノスケールの加工が必要である。そこで、まずは原理実証に焦点を当て、可視光領域と同じ動作原理で動作する赤外領域の光アイソレータとして、マイクロスケールのデバイスの製作に取り組んだ。デバイス製作に必要な金属キラル構造の製作には金属構造の多層化が必要で、位置合わせのパターニングや、下の層の埋め込みによる平坦化、エッチングによる埋め込み材の膜厚調整、金属蒸着時の膜厚調整など、ノウハウが必要な工程の技術蓄積について2020年度に取り組んだ。その技術を活用して製作した金属キラル構造を2021年度では別のポリマー基板に転写する方法を確立し、光学フィルタ化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究は、可視光における単層の光アイソレータの実現を最終目標としている。 2021年度の計画では、可視で動作するナノサイズの構造を持つ光アイソレータに比べて製作難度が低い赤外で動作するマイクロサイズの構造を持つ光アイソレータの製作に取り組む予定だった。2020年度の時点で金属を用いたキラルな構造の製作方法は確立していたが、強い片側円偏光吸収特性を発現させるためには構造の厚さをより厚くする必要があり、構造の厚膜化が難航していた。2021年度では厚膜構造を製作可能な方法を確立した。製作した金属キラル構造の光学特性を計測したところ、当初予想していた光学特性とは異なる結果が得られた。この結果より、金属キラル構造は基板の誘電率の影響を強く受けることが判明し、低誘電率の基板に転写することに取り組んだ。製作した金属キラル構造をポリマー基板に転写することに成功し、光学特性も目標の特性に近づいた。赤外領域で動作原理を実証することができれば、最終目標である可視光における光アイソレータの設計が可能になるため、赤外領域で実デバイスが製作できるようになったことで最終目標に大きく近づいたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、動作原理の実証のために、赤外領域で動作するデバイスの光学特性の評価に取り組む。デバイスの光学特性の計測結果とこれまでのシミュレーション調査の結果と比較し、提案する方法の動作原理の妥当性を検証する。動作原理の実証の後、可視光で単層の光アイソレータを達成するために、ナノスケールの金属キラル構造を製作に取り組む。このとき、デバイスの製作方法は赤外領域で動作するマイクロスケールの金属キラル構造の製作方法を踏襲する。製作したデバイスを用いてミラーに対する反射率の低減を評価し、最終目標である可視光領域での光アイソレータの実証に取り組む予定である。
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