2020 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制エフェクターを介したファイトプラズマの昆虫媒介機構の解明
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20J23168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳田 遼佑 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / 媒介昆虫 / ゲノム解読 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイトプラズマは1000種以上の植物に感染し、農業生産に甚大な被害をもたらす植物病原細菌の一群である。ファイトプラズマはヨコバイ等の昆虫にも全身感染することで媒介される。一般に昆虫は体内に侵入した細菌を排除するための免疫機構を持ち、ファイトプラズマも昆虫の免疫機構を誘導する因子を有している。しかしながら、昆虫のファイトプラズマに対する免疫反応の詳細や、それに対抗しファイトプラズマの昆虫体内への定着・増殖を可能とするメカニズムはこれまでに全く明らかになっていない。本研究では、ファイトプラズマが分泌するエフェクタータンパク質によって昆虫の免疫反応が抑制されている可能性を考え、そのようなエフェクターの探索と機能解析を行うことを目的としている。 本年度は、ファイトプラズマの感染によって昆虫が起こす免疫反応を解析するとともに、ファイトプラズマが持つ分泌タンパク質から昆虫の免疫反応を抑制するエフェクターの探索を進めているところである。 加えて、エフェクターに着目した昆虫媒介メカニズム解析を実施する上で基盤となる、ファイトプラズマゲノム解読を効率的に行うための実験系の構築にも取り組んだ。ファイトプラズマの純粋培養系は未だ確立されていないため、ゲノム解読の際には感染宿主由来のDNAが用いられる。しかし、その大半を宿主DNAが占めファイトプラズマDNAの割合が著しく低いことが、ゲノム解読の障壁となっていた。そこで、真核生物のゲノムDNAが特異的にCpGメチル化を受けることを利用し、メチル化CpG結合タンパク質で宿主DNAを除去することでファイトプラズマDNAを選択的に濃縮する系を構築した。 また、ゲノム未解読のアジサイ葉化病ファイトプラズマHP系統に自然感染したアジサイに対して本法を適用することで、HP系統のゲノムの大半を解読し、本法のファイトプラズマゲノム解読への有用性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ファイトプラズマが持つ分泌タンパク質から昆虫の免疫反応を抑制するエフェクターの同定を行う予定であった。[研究実績の概要]の欄に述べた通り、エフェクター特定に向けた探索を進めている上、ファイトプラズマの感染によって昆虫が起こす免疫反応を解析していることから、一定の進捗があったと考えている
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、免疫抑制エフェクターの探索を継続して行う予定である。さらに、特定したエフェクターが媒介昆虫の免疫機構に及ぼす影響を解析する予定である。
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Research Products
(4 results)