2021 Fiscal Year Annual Research Report
A novel role of glycolytic metabolites in adipocytes: signalling molecules that regulate lipid metabolism
Project/Area Number |
20J23198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
NG SU PING 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Methylglyoxal / Adipocyte |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代謝物によるシグナル伝達制御機構である代謝性シグナル分子の視点から、解糖系由来代謝物であるメチルグリオキサール(MG)をモデル代謝物として、脂肪細胞における糖・脂質代謝関連シグナル伝達機構とMGとの関連性に着目した解析を実施している。昨年度までの解析で、ベージュ脂肪細胞において、MGがβアドレナリン刺激により活性化される代謝的熱産生に寄与する脱共役タンパク質1(Ucp1)の発現を抑制することを見出した。また、3T3-L1脂肪細胞において、MGはインスリン刺激による糖取り込み活性を阻害することを見出した。 本年度は、昨年度までに見出したMGによるUcp1発現抑制および糖取り込み阻害機構に関する解析を行った。その結果、Ucp1発現抑制機構については、MGがベージュ脂肪細胞においてストレス応答性MAPキナーゼ(MAPK)であるp38およびJNKを活性化することを見出し、MGがJNKの活性化を介してUcp1発現を抑制することを明らかにした。それに対して、ベージュ脂肪細胞機能に寄与するUcp1以外のβアドレナリン刺激応答性遺伝子(Fgf21、Dio2など)の発現は、MGによる抑制効果を受けなかった。すなわち、MGはJNKを介してベージュ脂肪細胞のUcp1発現を特異的に抑制することが示唆された。一方、MGによる糖取り込み阻害に関しては、MGがmTORC1-S6K経路を活性化することで、インスリンシグナル伝達経路における負のフィードバック機構を介して、インスリン抵抗性様の作用を引き起こしている可能性を見出した。そこで次年度は、MGによるmTORC1-S6K経路の活性化機構について解析を進めるとともに、インスリン抵抗性の主要な要因の一つであるインスリン受容体基質IRS-1のセリン残基のリン酸化に着目することで、MGによる糖取り込み阻害機構の解明の目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度までに見出したMGによるUcp1発現抑制および糖取り込み阻害機構に関する解析を行った。MGによるUcp1発現抑制機構について、MGがベージュ脂肪細胞においてp38およびJNKを活性化し、MGがJNKの活性化を介してUcp1発現を抑制することを明らかにした。また、ベージュ脂肪細胞機能に寄与するUcp1以外のβアドレナリン刺激応答性遺伝子(Fgf21、Dio2など)の発現は、MGによる抑制効果を受けなかったことによって、MGはJNKを介してベージュ脂肪細胞のUcp1発現を特異的に抑制することが分かった。一方、MGによる糖取り込み阻害機構に関しては、MGはmTORC1-S6K経路を活性化を介してインスリン抵抗性様の作用を引き起こす可能性を見出した。 以上のように令和3年度の研究では、脂肪細胞機能調節におけるMGの新規機能とその分子メカニズムの一端を明らかにすることができたため、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、MGによる糖取り込み阻害の作用機構を明らかにするため、インスリンシグナル伝達経路における負のフィードバック機構の関与について検討を行う。具体的には、MGによるmTORC1-S6K経路の活性化の関与について、インスリン抵抗性の主要な要因の一つであるインスリン受容体基質IRS-1のセリン残基のリン酸化レベルを解析する。また、インスリン抵抗性の評価は、糖取り込み活性、およびインスリン刺激によるインスリンシグナル伝達経路の活性を用いて検討を行う。 これまでに本研究代表者は、MGがベージュ脂肪細胞においてストレス応答性MAPキナーゼ(MAPK)であるp38およびJNKを活性化することを見出している。そこで、MGによる3T3-L1脂肪細胞のmTORC1-S6K経路の活性化機構について、ストレス応答性MAPKの関与について検討する。MGの各MAPKへの影響については、MAPKのリン酸化レベルを指標としたウエスタンブロット解析を実施する。MGによる活性化が認められたMAPKについて、MAPK阻害剤がS6Kリン酸化レベルに及ぼす影響について検討することで、MGによるmTORC1-S6K経路の活性化機構おけるMAPKの関与を確認する。一方、MGと炎症応答との関連が指摘されている。ストレス応答性MAPKは炎症応答とも関連することから、MGによるmTORC1-S6K経路の活性化と脂肪細胞の炎症応答との関連についても検討を行う。
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Research Products
(3 results)