2020 Fiscal Year Annual Research Report
初期視覚野における行動目的依存的な神経細胞が担う認知機能の解明
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20J23228
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 慶 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 神経科学 / 視覚 / 神経回路 / サブネットワーク / カルシウムイメージング / 2光子光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質視覚野のニューロンは, 視覚入力のみならず, その個体が置かれる状況に応じて応答性を変化させる. 広範な動物種で行われている視覚を手がかりとした行動においても, 視覚野ニューロンの応答性は変化するが, どのような神経回路構造や理論によって活動を変化させているのかは不明である. そこで本研究ではマウス視覚野をモデルとして, 行動課題を課した際に活動する行動目的依存的な細胞群が持つ生理学的な役割, その神経回路基盤と演算機構を明らかにすることを目的とした. 本研究では, まず行動目的依存的な応答を惹起させるための行動実験系の構築を行った. 構築した課題を用いて, 行動課題中と受動的な視覚刺激受容時の2条件で神経活動を比較した. 神経活動記録には2光子顕微鏡による in vivo カルシウムイメージングを用いた. マウス初期視覚野にて神経活動記録を行った結果, 第2/3層と第5層より行動目的依存的に応答性を変化させる細胞を見出した. 次に, 応答性の形成機構を明らかにする目的で, 逆行性感染ウイルスベクターを特定領域へと微量注入することにより, 経路特異的に蛍光タンパク質を発現させ, 特定領野間における結合様式を評価した. また, 3次元で構成される微小な神経回路単位であるサブネットワークレベルでの機能解析を進めるために, 2光子顕微鏡による多焦点面同時イメージングを実施した. ウイルスベクターを用いて, 赤色カルシウム感受性蛍光タンパク質であるsRGECOをV1に発現させ, 深さの異なる層よりそれぞれ神経活動を捉えることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
逆行性感染ウイルスベクターによる解剖学的解析に成功し, 新規2光子顕微鏡による多焦点面同時イメージングを達成したため.
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験系および装置を2光子顕微鏡下に最適化するとともに, 複数個体からの神経活動記録を行い, 再現性を確認する. さらに引き続き, ウイルスベクターによって神経回路の解剖学的な評価を行うことで, 神経回路のモデルを作製する. 新規2光子顕微鏡を用いることで, サブネットワークレベルで神経活動の機能解析を進めるとともに, 2光子光遺伝学を用いて神経活動と行動における因果性を検証する.
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