2021 Fiscal Year Annual Research Report
SNAr/脱ニトロカップリング法による有用分子骨格の迅速合成法の開発
Project/Area Number |
20J23262
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
淺原 光太郎 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 芳香族ニトロ化合物 / パラジウム触媒 / 溝呂木-Heck反応 / 三次元骨格構築 / 不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒による芳香族ハロゲン化物と求核剤とのクロスカップリングは、2010年のノーベル化学賞の対象となったことが物語る通り、その高い信頼性から医農薬や有機電子材料の合成など幅広い分野で用いられている。近年、芳香族ハロゲン化物に変わるアリール化剤を用いたクロスカップリング法が精力的に研究されている。その中でも、より短工程で合成できる芳香族ニトロ化合物を用いたクロスカップリングが注目を集めている。ここで、これまで平面分子構築でしか用いられなかった脱ニトロ型カップリングを三次元骨格構築法へ拡張できれば、従来法では実現しなかった三次元分子の合成戦略の立案につながると期待できる。しかし、現在の脱ニトロ型カップリングではその反応温度の高さから不斉反応への展開が困難であると考えられる。本研究では、この課題を解決するようなニトロ基活性化剤の設計・開発に着手する。本活性化剤はニトロ基の活性化だけでなく、酸化的付加後に生じるパラジウム錯体上のニトロ基の解離を促進し、空配座を形成する効果も期待できる。これにより、オレフィンの配位挿入を加速できると考えている。さらに、活性化剤をキラルとすることで、ニトロ基の解離によって生じるNO2複合アニオンをキラルアニオンとみなすことができる。このキラルアニオンによって不斉誘導ができれば、分子内不斉溝呂木-Heck反応が実現すると考えている。 現在までに、脱ニトロ型カップリングによる二次元分子の迅速合成および分子間脱ニトロ型溝呂木-Heck反応を開発している。本年度は、オレフィン部位とニトロアレーン部位をあわせもつ原料に対し、パラジウム触媒を用いることで分子内反応が進行し、脱ニトロ型カップリングによる三次元骨格構築が可能であることを示した。さらに、分子間および分子内の脱ニトロ型カップリング反応における (チオ)ウレアによる効果を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、2021年度の段階で分子内反応を確立させ、活性化剤の開発に着手している予定であった。昨年度は、分子内反応により脱ニトロ型カップリングで初めて三次元炭素骨格構築を見いだした。現在はこの成果をまとめ論文として発表する予定である。また、本反応を不斉反応へ展開させるためには、より低温で酸化的付加を進行させる必要があり、これに用いるウレアの効果も調査した。活性化剤がニトロ基と水素結合を介して相互作用することで、ニトロ基の活性化およびそれによる反応温度の低温化が望めると考えていた。数種類のウレアを分子間反応の系中に添加したところ、目的のカップリング体の収率が低下することがわかった。ごく少量の添加でも反応を阻害することがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今着手している分子内溝呂木-Heck反応をまとめ、ニトロ基の活性化剤の開発に着手する。反応の不斉化には低温化が不可欠であるが、炭素とニトロ基間の結合は強固であり脱ニトロ型反応には高温を必要とする。そのため、より低温で反応を進行させるような活性化剤の開発が必要となる。ここで、当初の計画ではニトロアルケンに対する不斉マイケル付加反応で用いられるような、ニトロ基と水素結合を形成する(チオ)ウレア部位をもつ活性化剤を用いる予定であったが、脱ニトロ型分子間溝呂木-Heck反応において(チオ)ウレアが強い反応阻害の効果を有することがわかったため、反応条件の見直しや(チオ)ウレアとは異なる活性化剤を設計する必要がある。
|
Research Products
(1 results)