2021 Fiscal Year Annual Research Report
characterization of luminal breast cancer metastasis
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20J23297
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
HAN YUXUAN 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 骨転移 / 転移因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、luminal型乳がん骨高転移株MCF7-BM細胞に発癌性転写因子c-jun発現量の増加とそれに伴うリン酸化c-junの増加を認めた。そこでMCF7-BM細胞にc-junの機能を阻害するdominant negative変異体TAM67を発現させ(TAM67発現細胞)、初代骨髄細胞と共培養したところ、活性化破骨細胞の数が減少した。すなわち、MCF7-BM細胞の破骨型転移は、c-junの過剰発現によって引き起こされる可能性が示唆された。次にTAM67発現細胞あるいはMCF7-BM細胞を免疫不全マウスの尾動脈から移植し、経時観察を行った。結果として、TAM67発現細胞によって形成される骨転移巣はMCF7-BM細胞のものより小さくなり、c-junの阻害により骨転移能が減弱することが明らかになった。以上の結果から、c-junは、MCF7-BM細胞における転移能と破骨能を促進する因子であることが明らかになった。 そこで、本年度の研究目的を、「luminal型乳がんの骨転移におけるc-junの機能の解明」とした。c-junの下流で骨転移を制御する分子機構を解析するため、TAM67発現細胞とMCF7-BM細胞の網羅的遺伝子発現解析を行った。親株(MCF7-parent)と比較解析して、TAM67発現細胞とMCF7-parent 細胞とで発現の増減が共通する遺伝子を抽出した(高発現:567遺伝子、低発現:353遺伝子)。これらの遺伝子はc-junの下流で転移を制御する遺伝子候補と考えられる。また、公共データベースMETABRICに登録された臨床データを用いて同定したc-junの下流遺伝子の発現解析および生存解析を行った。その結果、臨床検体における予後予測マーカーになれる遺伝子を同定することができた。以上の結果より、c-junがluminal型乳がん骨転移の新規治療標的として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、c-junの下流で骨転移を制御する分子機構を解析するため、RNA-Seqを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。c-junの機能を阻害したがん細胞TAM67とMCF7-BM細胞の遺伝子発現を比較して、c-junの下流で骨転移を制御する候補遺伝子を抽出した。また、公共データベースMETABRICに登録された臨床データを解析することで、同定したc-junの下流遺伝子の発現解析および生存解析を行った。この中で、臨床検体における予後予測マーカーとなりうる遺伝子を同定できた。 そこで、c-jun経路を抑制が転移能の低下につながるかを検討するため、JNK阻害剤を使ってMCF7-BM細胞に対してc-junの阻害実験を行った。JNK阻害剤を用いてMCF7-BM細胞の細胞増殖、コロニーフォーメーション、浸潤能に対する阻害効果を評価した。結果として、JNK阻害剤はMCF7-BM細胞の遊走能とトランスフォーム能を阻害した。さらに、JNK阻害剤を免疫不全マウスへ投与し、骨転移の頻度及び腫瘍の大きさを評価したところ、MCF7-BM細胞の骨転移巣はJNK阻害剤の投与により縮小し、JNK阻害剤により骨転移が抑制されることが明らかになった。 以上の結果の一部を、2021年の日本がん転移学会、日本分子生物学会の発表を行うことができた。また、筆頭著者としての論文[Metastatic profiling of HER2-positive breast cancer cell lines in xenograft models]をClinical and Experimental Metastasis に発表した。今年度は期待以上の進展があったと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に抽出したc-junの下流で転移を制御する遺伝子候補を、MCF7親株にウイルスベクターを用いて過剰発現させ、TRAcP アッセイで破骨細胞分化能を評価する。その中から、破骨細胞を分化・活性化させた遺伝子について、過剰発現株をマウスに移植し、骨転移能を評価する。次に、高転移株MCF7-BMを用いてCRISPR/Cas9システムによる KO株を作製し、同様に移植することで転移能を評価する。回収したマウスの転移巣に対して、組織免疫染色による組織解析を行うことで、c-jun下流シグナルの機能解析を行う。 並行して、過剰発現株とKO株を用いて細胞増殖、wound-healingによる遊走能・浸潤能などのin vitro表現型の評価を行う。また、The Cancer Genome Atlas(TCGA)などの大規模公共データベースに登録された臨床データを解析することで、同定したc-junの下流遺伝子の発現解析および生存解析を行って、臨床検体における予後予測マーカーになりうるか評価する。 さらに、購入可能な阻害剤を使ってBM細胞にc-jun下流遺伝子の阻害実験を行う。BMの細胞増殖、コロニーフォーメーション、浸潤能に対する阻害効果を評価する。下流遺伝子の阻害による骨転移への治療効果を調べるため、免疫不全マウスへ注射し、骨転移の頻度及び腫瘍の大きさを評価する。 これまではルミナル型に着目して研究を進めたが、さらに、研究室に既に樹立されているトリプルネガティブ型 とHER2陽性型乳がん骨転移株を用いてc-junの発現量を調べ、c-junと乳がんサブタイプの関連性を明らかにする。また、この解析で判明したc-jun高発現の骨転移株とc-jun低発現の骨転移株を用いてRNA-seq解析を行い、骨転移の制御因子、臨床予測マーカーを抽出する。得られた成果は日本がん学会などの学会で発表し、学術雑誌へ発表する。
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