2021 Fiscal Year Annual Research Report
透明酸化物薄膜トランジスタによるセンサ・オン・フィルムの創成
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20J23326
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 崇典 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 薄膜トランジスタ / 酸化物半導体 / 化学センサ / 信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.酸化物半導体材料の探索と信頼性評価について 今年度はこれまでに得た知見を活かし、酸化物半導体材料の材料探索および酸化物薄膜トランジスタの信頼性評価も継続して行っており、電界効果移動度50 cm2/Vを超える酸化物薄膜トランジスタや高温熱処理耐性を有する酸化物半導体の作製に成功した。この結果はセンサ応用に限らず他分野への応用が期待できると考えられる。また、酸化物薄膜トランジスタの信頼性劣化現象として光照射下におけるしきい値電圧の変動が挙げられるが、本現象の理解に向けて半導体メモリの知見が活用できることを発案し、信頼性評価方法とその劣化メカニズムについて国際会議にて発表を行った。
2.酸化物薄膜トランジスタを用いた化学センサについて 昨年度の検討によって、In-W-Zn-O系を活性層に用いた薄膜トランジスタが高電子移動度かつ低ゲート電圧領域 (<3 V) で飽和動作することを見出しており、信号変換素子として重要な電気特性の安定性も優れることを確認した。本酸化物薄膜トランジスタを信号変換素子としたセンサデバイスへ応用を図り、生体分子の検出実験を行った。検出対象は生体分子であるヒスタミンを選択し、検出部としては4-メルカプト安息香酸を自己組織化単分子膜として修飾させたAu電極/PEN基板を用いた。検出実験においては、信号変換素子の延長ゲート型酸化物薄膜トランジスタは一定のゲート電圧とドレイン電圧で駆動させ、検出溶液中のヒスタミン濃度の変化に対するドレイン電流の経時変化を測定した。ドレイン電流はヒスタミン濃度の増加に伴って増加し、標的種の検出に基づく延長ゲート電極上で発生する電位変化をリアルタイムで出力可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酸化物半導体材料の探索と信頼性評価においては、当初想定していたセンサ用信号変換素子の性能要求と信頼性要求を概ね満たす酸化物薄膜トランジスタが得られている。本酸化物材料の探索の副産物として、センサ用途に限らず他分野にも応用可能な酸化物半導体材料が見つかり、信頼性劣化解析に関する興味深い知見も得られた。これらは酸化物半導体分野およびデバイス物理において学術的・産業的価値が高いと判断して評価を進めているため、当初の計画よりも実験内容が拡大している。 また、酸化物薄膜トランジスタを用いた化学センサにおいては、生体分子のリアルタイム検出に成功しているが、検出メカニズムの理解が浅い、滴定特性の再現性が十分ではない等の課題もあり、成果発表に繋がっていない。 以上より、酸化物半導体材料の探索と信頼性評価においては十分な知見が得られているが、センサ応用では解決すべき課題が残されており、当初の研究計画からは遅れが生じているため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は信号変換素子用に最適化した酸化物薄膜トランジスタを用いて、生体分子の検出実験に注力していく。中でも再現性を十分に確保するために、検出部おけるレセプタ分子の修飾方法の最適化とその物性評価は急務であると考えている。その後、本検出系における各種生体分子に対する応答性・選択性、検出機構に関する考察を行う予定である。また、より安定動作が見込める参照電極のいらないトランジスタ構造の適用も検討しており、研究の進捗状況に応じて延長ゲート型からの変更も視野に入れている。また、最終年度はこれまでの成果も合わせて、酸化物薄膜トランジスタのセンサ応用における優位性についてまとめていく予定である。
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