2020 Fiscal Year Annual Research Report
抗体及び機能性ペプチド内封型脂質ナノ粒子開発による抗体の細胞内抗原への展開
Project/Area Number |
20J23340
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 勇祐 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 脂質ナノ粒子 / タンパク質送達 / pH応答性脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体医薬を含むタンパク質は、その生体における多彩な効果から種々の疾患に対しての貴重な医薬品シーズとなりうる。しかし、タンパク質は親水性の高分子であり、細胞膜透過性に乏しく、機能発現の場は細胞外に限局されている。タンパク質を細胞内に送達できれば、タンパク質医薬品の適用範囲を細胞外から細胞内に拡大でき、新薬創出を加速することが期待される。 令和2年度では、脂質ナノ粒子(LNP)を用いたタンパク質の細胞内送達技術の構築を目指し、実効電荷反転型pH応答性脂質(charge-reversible lipid)を用いた核酸医薬の細胞内送達技術に倣い、負電荷を帯びたタンパク質の細胞内送達を試みた。モデルタンパク質として核移行配列(NLS)を有する超負電荷性緑色蛍光タンパク質[NLS-(-30)GFP]を内封する脂質ナノ粒子[NLS-(-30)GFP-LNP]の調製を行い、NLS-(-30)GFPの細胞内送達能を評価した。 Charge-reversible lipidを含む脂質とNLS-(-30)GFPを混合し、NLS-(-30)GFP-LNPを調製した。NLS-(-30)GFP-LNPは直径200 nm以下の粒子であることを確認した。次に、本脂質ナノ粒子をがん細胞に添加し、細胞内に移行したNLS-(-30)GFPを共焦点レーザー顕微鏡にて確認した。その結果、NLS-(-30)GFP添加群と比較し、NLS-(-30)GFP-LNP添加群ではエンドソーム内のNLS-(-30)GFPシグナルの増強およびサイトゾル・核でのシグナルが確認された。つまり、調製した脂質ナノ粒子は、負電荷タンパク質をサイトゾルに送達できることが明らかとなった。 以上の検討から、令和2年度では、charge-reversible lipidを用いた負電荷タンパク質のサイトゾル送達技術の確立に一歩近づく結果を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度では、charge-reversible脂質を用いて、負電荷タンパク質を内包する脂質ナノ粒子の調製検討を行い、そのサイトゾルへの送達能を評価した。その結果、charge-reversible脂質を主要脂質とする脂質ナノ粒子内に負電荷タンパク質を内包できることを明らかとした。さらに本脂質ナノ粒子はサイトゾルへのカーゴの送達能があることも確認した。つまり、負電荷を帯びるタンパク質であれば、脂質ナノ粒子内へ封入することができ、サイトゾルに送達することが出来る可能性が示された。 本研究テーマの本来の目的は、抗体分子のサイトゾルへの送達による細胞内に存在する抗原に対して抗体を作用させることである。現状では、モデルタンパク質の送達に成功したのみであり、本研究の目的として掲げる「抗体の脂質ナノ粒子内への封入」と「サイトゾルへの送達評価」を実施できずにいる。そのため、現状での進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル負電荷タンパク質を脂質ナノ粒子内に封入し、そのサイトゾルへの送達が出来ることを明らかとしてきた。そこで、抗体分子を負電荷化することができれば、抗体の脂質ナノ粒子内への封入および抗体分子のサイトゾルへの送達が期待できる。そこで、まず抗体の負電荷化を検討する。具体的には、抗体に特異的に結合するペプチド配列を合成し、そのペプチドに酸性アミノ酸オリゴマーを付加することで抗体の負電荷化を行う。抗体の負電荷化を達成できた場合に、モデル負電荷タンパク質を封入したように脂質ナノ粒子の調製検討を実施し、調製した脂質ナノ粒子の物性(粒子径・形態観察・内封率)を評価する。その後、脂質ナノ粒子による抗体のサイトゾルへの送達活性を共焦点レーザー顕微鏡にて確認を行う。また、サイトゾルへの抗体の送達能を増強するため、エンドソーム不安定化ペプチドの脂質ナノ粒子内への組み込みを検討する。以上のように研究を進め、本研究の目的である抗体をサイトゾルに送達可能とする脂質ナノ粒子『抗体内封型脂質ナノ粒子』の開発を行う。
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