2020 Fiscal Year Annual Research Report
複雑細菌群集の時系列データを用いた安定性予測と操作実験による群集動態の制御
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20J23344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 博昭 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 生態学 / 生物群集動態 / 非線形力学 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物群集は、環境の変化や餌資源の競争などにより、その動態を決定することは、理論研究や実証研究により、よく知られている。しかし、未だに、将来において群集動態が安定になるか不安定になるかは予測が困難である。近年、発展してきた非線形力学系の予測に用いられるEmpirical dynamic modelling(EDM)という手法がある。これは、比較的短期間における個体群動態の時系列データのみから、動態予測だけでなく、その系に関わる変数を推定、変数間の相互作用を各時間点ごとに定量できる手法である。また、変数間の相互作用を推定することができるので、局所的に推定されたヤコビ行列の最大固有値を見ることで、安定性も評価できる。 本研究は、このEDMの有用性を、実証研究により明らかにし、群集動態の安定性や、操作の可能性について検討することを目的としている。 2020年度において、複雑な細菌群集の時系列データから、群集を予測できることが示唆された。しかし、「今までに観測されなかった動態」の予測は困難であることも分かった。予測困難性が生じる原因として、生物群集が、位相空間において、以前とは別の軌道を描こうとしているのではと考えた。つまり、実測値と観測値の誤差が大きくなるにつれ、将来は大きな変化が起きるということである。そのような誤差が、将来に大きな変化が起こる予兆(Early warning signals:EWS)となると考え、検証したところ、大きな変化を示しうることが、実証研究からもシミュレーションからも示唆された。現在はこの指標の検討を様々な角度から行なっている。 この指標の有用性が示すことができれば、生態学だけでなく、あらゆる非線形力学系に適応でき、安定性の予測を行うことを可能とさせる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来においては、EDMから示された変数間の相互作用から推定される安定性指標の精度について評価し、その指標を説明する要因を探索する予定だったが、群集動態の変化を何も説明することができなかった。そこから、EDMの手法の妥当性を検討した。その結果、EDMの欠点である予測精度の悪さが、群集動態の変化を知る予兆として利用できることが分かった。これにより、動態予測が可能であることが示唆されたため、研究目的の一部は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
EDMを用いたEWSの提案は、シミュレーションベースにより行なっている。その結果、確率的な摂動により、群集が変化し始めた時、予測が困難であり、変化の始まりをEWSとして捉えられることが分かった。しかし、実データにおいては、確率的な摂動により群集が変化したのか、外的パラメータが変化したことにより、群集が変化し始めたかは分からない。そのメカニズムの推定のため、今後は環境変数として、溶存態全炭素などを測定し、環境と群集動態の因果関係について、探索を行う。
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Research Products
(1 results)