2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the practical method to preserve freeze-dried spermatozoa at room temperature
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20J23364
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
伊藤 大裕 山梨大学, 医工農学総合教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | フリーズドライ精子 / シート保存 / 常温保存 / 郵送 / 凍結乾燥保護剤 / トレハロース |
Outline of Annual Research Achievements |
コーヒーなどのインスタント食品でも使われているフリーズドライ(凍結乾燥)技術を使った哺乳類精子の保存技術(フリーズドライ精子)は長期間の常温保存が可能である。ところが、従来使われていたアンプル瓶はガラス製であったため、割れたりひびがはいったりすると精子が保存できなくなってしまう危険があった。それに加えアンプル瓶には厚みがあり、たくさんの試料を保存するには一定のスペースが従来必要であった。本研究では、薄いプラスチックシートに精子を挟んで保存することに成功し、たった1冊のカードホルダーに数千にも及ぶような膨大な精子試料をコンパクトに保存できる技術を開発した。さらにシートに挟んだ本方法は非常に薄くて軽いため、この技術を応用し、精子を挟んだプラスチックシートをハガキに貼り付けるか封筒に入れてポストに投函し、県をまたいだ精子試料の国内郵送にも成功した。本成果は国際総合誌への論文掲載 (Ito et al., iScience, 2021)と、国際プロトコール(Ito and Wakayama, STAR Protocols, 2021)として本年度2報を発表した。このうち、1報目はCellPressのホームページトップでの紹介や掲載誌側のプレスリリース論文にも選出され、国内外の記事でも多数報道されたほか、2報目は雑誌側からの執筆依頼も踏まえ発表した。上記成果は、フリーズドライ精子の常温保存の実用化に向けた研究項目の1つであるが、出産率と運動機能の回復も目標としており、次年度はこの2つの課題についても複数報の国際論文発表を目指し実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3つのテーマを同時に進行させており、1つ目の出産率を改善するテーマは、膨大な量の凍結乾燥保護剤や乾燥条件の網羅的探索という地道な研究であり、まだ良い成果は得られていないものの、確実に進んでいる。2つ目のテーマである薬包紙に精子を挟んで保存する技術の開発については、今年度Cellの姉妹紙に論文(Ito et al., iScience, 2021)とプロトコール(Ito and Wakayama, STAR Protocols, 2021)をそれぞれ発表することができた。この技術を使うことで、世界初の精子のアルバム保存や郵便はがきで精子を他の大学へ輸送し子供を作ることに成功し、国内外の新聞やネットニュースで記事が報道された。3つ目の精子の運動性の復活に関するテーマについては、世界で誰も成功しておらず不可能ではないかと考えられている内容であり、まだ成功していないが、その取り組みは重要であり、失敗した成果ではあっても何らかの論文として発表できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
低出産率の改善では、スクロースやトレハロースをはじめとした糖類など、精子の保護や精子懸濁液の凍結乾燥状態の変化が期待される様々な試薬の濃度や処理時間、タイミング、組み合わせの検討を引き続き進める。この検討項目について、常温で数ヶ月保存した場合に効果が出てくる可能性もあるため、昨年度までに作製した凍結乾燥精子を用いて、各試薬の出産率に対する効果を検証する。 ガラスアンプルを使わない精子の常温保存技術の開発では、昨年度論文発表した精子のシート保存技術について、常温保存に必要な条件を検討し、簡便な精子の国際輸送が可能な技術を開発できるまで、凍結乾燥精子の処理方法や保存容器の検討を詳細に行う。各実験の対照群には、すでに1年以上の常温保存が可能なガラスアンプルで保存した凍結乾燥精子を用いる。 精子の運動性の復活では、精子懸濁液の水分量と相状態、最適体積の検討に加え、真空乾燥機内の気圧の調整を行い、精子の運動性の保存または復活に必要な条件や方法を確定していく。 すべてに関して論文を発表できるよう、それぞれ実験を進める。
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