2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20J23393
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山岸 拓幹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | シリルシラノラート / シリル銅 / ヒドロシリル化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の研究として、シリルシラノラートを用いた銅触媒存在下でのシリル化反応の開発に取り組んだ。種々の検討の結果、銅触媒存在下シリルシラノラート、アルコールを用いることでジアリールアルキンのヒドロシリル化反応が良好な収率で進行することを見いだした。本ヒドロシリル化反応はジアリールアルキン以外に、アルキルアリールアルキン、ジアルキルアルキンにも適用可能であった。また、アルキン以外にもアレンやα,β-不飽和カルボニル化合物に対しても適用できた。本研究を通してシリルシラノラートが従来のシリル化剤と同様にシリル銅前駆体として利用できることを示した。また本ヒドロシリル化反応では従来のシリル化剤を用いた場合には導入が困難であったシリル基も導入でき、シリルシラノラートを用いる利点も示すことができた。 さらに私はシリルシラノラートから銅原子上へのシリル基の移動過程について知見を得るべくDFT計算による反応機構解析を行った。その結果、シリルシラノラートが銅上に配位した中間体から、分子内でシリルシラノラートのケイ素-ケイ素結合が銅中心に酸化的付加してシリル銅が生成する過程が示唆された。シリルボランなどの従来のシリル化剤は銅アルコキシドとのシグマ結合メタセシスを経てシリル銅を与えると考えられている。これらのことから、今回のDFT計算により示されたシリルシラノラートを用いた際のシリル銅の生成過程は従来想定されたシリル銅生成過程とは大きく異なることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリルシラノラートを用いた銅触媒存在下でのヒドロシリル化反応の開発を達成できたことが大きな進捗だと考えている。本研究を通して、配位子の反応効率に与える影響や本反応の官能基許容性について知見を得た。 本ヒドロシリル化反応は当初予定していたアルキン以外にも、シリル銅と反応することが知られる、アレンやα,β-不飽和カルボニル化合物に対しても広く適用することができた。また本反応では、従来のシリル化剤を用いた場合には導入が困難であったシリル基の導入にも成功した。これらの結果は、シリルシラノラートが従来のシリル化剤と同様、もしくはそれら以上に、シリル銅前駆体として有用であることを示しており、非常に興味深い。 また、シリルシラノラートから銅原子上へのシリル基の移動過程についてのDFT計算を用いた解析においても大きな成果を得た。本反応機構解析で示唆されたケイ素-ケイ素結合の銅中心への分子内酸化的付加を経るシリル銅の生成過程は、従来のシリル化剤を用いた場合に想定されている生成過程とは大きく異なる。この解析結果はシリル銅のみならず他の銅種の生成過程についても新たな可能性を示唆しており、反応剤の新規設計指針になることが期待される。 これらの理由から、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通して、ジメチルシリルシラノラートの合成とその反応性についての調査は大きく進展した。しかし、ジメチルシリルシラノラートは導入できるシリル基の種類が限定的であるという課題を抱えている。私はこの課題が、ジメチルシリルシラノラートの合成前駆体にジクロロテトラメチルジシランを利用する必要があることに起因していると考えている。そこでこの課題を解決すべく、導入するシリル基の多様性を実現できる新規置換様式のシリルシラノラート、特にジフェニルシリルシラノラートの開発に取り組む。 容易に調製可能なジフェニルアミノシリルリチウムをクロロシランに作用させ、対応するアミノジシランを合成する。得られたアミノジシランを加水分解し、続いて脱プロトン化することで、目的のジフェニルシリルシラノラートが得られると考えている。この合成法を用いれば、様々なクロロシランを用いることで、多様なシリル基を有するジフェニルシリルシラノラートが合成できる。このことから、ジフェニルシリルシラノラートを用いれば、合成時に利用するクロロシランに対応した様々なシリル基が導入できるので、従来のジメチルシリルシラノラートが抱えていた課題を解決できると考えている。
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Research Products
(5 results)