2020 Fiscal Year Annual Research Report
波長2~5μmの赤外-可視量子もつれ光源による、広帯域赤外量子吸収分光法の実現
Project/Area Number |
20J23408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒畑 雅也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 赤外量子吸収分光 / 波長可変可視-赤外域量子もつれ光子対源 / 量子干渉 / フーリエ変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①波長可変な赤外量子吸収分光測定に関する研究、②フーリエ変換量子赤外分光法の提案と実証に関する研究の2つの研究を行った。 ①では修士課程で実現した赤外-可視量子もつれ光源を実装した波長可変な赤外量子吸収分光測定に関する研究に取り組んだ。これまでに提案された赤外量子吸収分光測定では、量子もつれ光の発生帯域が狭いため、測定帯域が波長1μm以下に留まっている問題があった。そこで、修士課程で実現したもつれ光源を実装した波長可変な赤外量子吸収分光測定の実験系を構築した。その結果、もつれ光源に用いた非線形光学結晶を励起光に対して回転させることにより波長2-5μm域で量子干渉信号の観測に成功した。さらに、結晶の回転ステージやミラーの掃引ステージなどに対して自動測定プログラムを構築し、検証実験としてシリカガラス窓の吸収スペクトルの測定を行った。現在、さらに系の最適アライメントの自動化を発展させ、広帯域かつ波長可変な赤外量子吸収分光測定の検証実験に取り組んでいる。 ①と並行して②フーリエ変換量子赤外分光法の提案と実証に関する研究にも取り組んだ。提案された赤外量子吸収分光では、赤外吸収スペクトルを測定するために、可視光用の分光装置が必要で測定システムが大型化・高コスト化してしまうという問題があった。そこで本研究では、取得した量子干渉信号に対してフーリエ変換を行うことで、分光装置を利用せずに単純で小型な単一可視光子検出器で測定可能なフーリエ変換量子赤外分光法を提案した。まず、量子光学に基づいた理論計算のモデルを構築し、実際に量子干渉系を用いて波長1550 nm付近での実証を行った。これにより、当波長域における光学フィルターの透過率絶対値スペクトルや、石英ガラスの屈折率と消衰係数のスペクトルの計測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、まず波長可変可視-赤外域量子もつれ光子対源を用いた赤外量子吸収分光測定系を構築し、大気中で特定の波長のもつれ光子対に対して干渉縞を観測することで系の動作確認を行う予定であった。しかし、本年度ではすでに波長2-5μmでの広帯域で干渉信号を測定することに成功しており、また干渉系を用いてシリカガラスの窓の吸収スペクトルの測定も行うことができた。また、フーリエ変換量子赤外分光法の提案と実証も行っており、赤外量子吸収分光測定の小型化、高感度化を可能とする結果である。これらの理由により本年度は当初の計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した干渉計において明瞭度の減少を防ぐために、自動アライメントシステムを導入する。まず、レンズの微調整を行う電動フィードバックステージの選定を行い、明瞭度が最大となるための測定プログラムを構築する。構築したプログラムを用いて波長2-5 μmの広帯域で波長可変な自動測定赤外量子吸収分光系を実現する。また、リッジ導波路を用いた高効率な可視-赤外域量子もつれ光子対の生成と評価を行う。まず、デバイスの光学性能評価として第二高調波発生を観測するための実験系を構築し、励起光強度依存性から規格化変換効率を求める。次に、可視-赤外域もつれ光子対を生成し同時計数計測を行うことで、バルク非線形光学結晶との発生効率を比較する。
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