2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J23449
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
小林 里帆 名古屋市立大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / ショウジョウバエ / PDF神経 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエでの新規睡眠関連遺伝子Sik3のリン酸化サイトによる睡眠増加機構の解析を目的とする。 当該年度は、探索実験として従来のSik3-SAに加え、486番目のTをAに置換したSik3-TA、またこれらの両方を持つダブルミューテーションSik3-SA/TAを全神経で発現し、睡眠計測を行なった。その結果、恒常発現ではいずれも致死性を示し、リン酸化変異の重要性が示唆された。成虫後に遺伝子発現を誘導する系を用いて検討したところ、全ての変異体で睡眠増加が観察された。一方で野生型のSik3を過剰発現させると睡眠量の有意な増加は観察されなかった。この結果からSik3-SAによる睡眠増加はSik3の過剰発現そのものではなくリン酸化サイトによる睡眠制御であることが示唆される。 さらに、昨年度までにPDF神経において14-3-3タンパク質を発現すると、睡眠量が減少することを明らかにしていたが、今年度はRNAi系統も使用した。自身の結果に加え、他グループからも同様の報告があることを確認し、結果の妥当性を確かめた。14-3-3とSik3-SAをPDF神経で過剰発現させた場合の睡眠量を検討するために、該当するショウジョウバエの作製を行い、完了した。 さらに、Sik3-SAによる睡眠増加は恒暗条件(DD)で観察され、アリズミック様の行動パターンを示す。この睡眠フェノタイプと概日リズムとの関連性を検討するため、全神経でSik3SAを発現したときの時計遺伝子の発現パターンを経時的にRT-PCRで評価した。その結果、野生型と比べ、per,timをはじめとする時計神経の挙動パターンには違いが見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、PDF神経をはじめとする時計神経でのSik3のリン酸化サイトによる睡眠制御機構の解析である。当該年度の研究成果として、Sik3内に存在する他のリン酸化サイトの変異体でも同様の睡眠増加フェノタイプを確認した。Sik3タンパク質そのものの過剰発現ではそれらが確認されなかったことより、睡眠制御においては量的なものではなく、リン酸化反応が重要であることを改めて示すことができた。 さらに、Sik3SAの睡眠制御は概日リズム中枢であるPDF神経が機能部位ではあるが、Sik3SAによる時計神経の発現パターンには野生型との違いが見られなかったことより、これらのリン酸化は睡眠量調節に直接的に働くことも示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究遂行は概ね順調であるため、令和4年度は、当該年度で得られた研究結果を元に、これまで継続的に行ってきた、Sik3のリン酸化サイトが睡眠増加に関与するメカニズムの探索を完了させ、論文発表を行う。 さらに、当初の予定通り断眠操作を行ったショウジョウバエでも、本研究で想定した経路が関与しているか検討を行い、評価する予定である。
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Research Products
(4 results)