2020 Fiscal Year Annual Research Report
活動量から眠気を生成するモデルによる睡眠制御状態の追跡とライフスタイル個別最適化
Project/Area Number |
20J23525
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
天野 領太 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / 概日リズム / 海馬 / シナプス可塑性 / 認知機能 / 活動量 / ヘルスケア / 睡眠障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
R2年度は、健常者と睡眠障害患者の活動量計測を実施しデータを解析する予定であった。この結果は、R3年度に予定している活動量から眠気ダイナミクスを生成するモデルの構築に用いる予定であった。しかし、COVID-19の影響によりR2年度の実験を実施することが出来なかったため、急遽計画を変更しR3年度に予定していたモデルの構築を先に遂行する方針にした。この際、活動量と主観的眠気の計測データを前提とした方法とは異なったアプローチが必要であった。そこで、脳の認知機能に着目し、主に齧歯類で得られている認知機能に関する先行研究をもとにして,海馬における概日リズムと睡眠/覚醒サイクルによるシナプス可塑性制御の抽象モデルの構築を試みた。現在,モデリングの途中であり、睡眠/覚醒サイクルがシナプス可塑性に与える影響を再現することを目指している。長期的には、眠気の実態として着目されている特定のタンパク質リン酸化などの分子レベルの現象にまで詳細化することを想定している。
一方で、共同研究の一環としてCOVID-19と睡眠障害・睡眠習慣との関連性について研究を行なっている。解析結果は、睡眠障害や不規則な睡眠習慣がCOVID-19と強く関連していることを示唆している。この結果については、R3年度の早い段階で論文投稿を予定している。今後は、COVID-19下でも可能な活動量計測を模索しつつ睡眠障害患者の活動量計測を実施する予定であり、R2年度に予定していた本来の研究課題の補完を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、健常者と睡眠障害患者の活動量計測等の実験結果に基づいて、活動量から眠気を生成するモデルの構築を予定していた。しかし、COVID-19による実験の中止によって、当初の計画とは異なるアプローチが必要となった。そこで、海馬における学習・記憶/認知機能に着目し、これらの基盤と考えられるシナプス可塑性ダイナミクスの数理モデル構築を主な目標とした。 この数理モデルは、認知機能に対する睡眠/覚醒サイクルの影響を予測するモデルであるため、当初に予定していた活動量から眠気を生成するモデルの基礎となる。すなわち、R3年度に予定していたモデリングに前倒しで着手している。 以上から、計画に多少の前後はあったものの、時間的/物理的な制約のもとで最小限の計画変更に留めており、3年間の研究計画を通して総合的に判断すると、概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、R2年度に精査した知見に基づいて、睡眠/覚醒サイクルと概日リズムの効果を取り入れた海馬シナプス可塑性の抽象モデル構築を目標とする。 既に提案されている海馬シナプス可塑性モデルのいくつかは、計算論的な立場もしくは現象論的な立場に立脚したモデルであり、広く受け入れられている。しかし、睡眠/覚醒サイクルと概日リズムの効果を考慮したモデルは本研究者の知る限りでは存在しない。海馬ではシナプス可塑性に関連する分子の概日振動が確認されており、学習刺激によるシグナル伝達機構も明らかになりつつある。さらに、睡眠/覚醒状態に関連したリン酸化/脱リン酸化現象や、睡眠/覚醒状態に関連するいくつかの神経伝達物質によるシナプス可塑性の調節機構も知られている。これらの知見を集約し、概日リズムと睡眠/覚醒サイクルの相互作用の下で変化するシナプス可塑性モデルの構築を試みる。モデルの構築にあたっては、先行研究の多くのモデルで実装されている基本的なシナプス可塑性現象を再現したうえで、学習・記憶に関する行動学的実験の結果を再現することを試みる。 上記に並行して、COVID-19下でも可能な活動量計測実験を模索しつつ、R2年度に予定していた研究内容の補完を目指す。
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