2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of Supramolecular systems with mechanical property
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20J23539
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
米澤 俊平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 圧力化学 / 超分子 / アントラセン |
Outline of Annual Research Achievements |
加圧によるタンパク質の変性や脂質膜の相転移挙動など、種々の生体機能が非可逆的な圧力応答を示すことが古くから知られている。そのような圧力に対する生体応答の模倣を目的として、圧力応答性を有する人工分子システムが注目されている。しかし、これらの類例は分子間相互作用の強く働く固体に限定されており、圧力応答に非常に高い圧力を要するという課題が残っている。当研究室では、溶液中の超分子集合体に対して、静水圧をかけることで可逆的に集合様式が変化することを実証した。しかし、生体に見られるような圧力に対する非可逆的な応答は、いまだわずかに散見されるのみであり、非可逆的応答を示すシステムの構築は課題となっている。 そこで、多様な水素結合様式を形成する糖類を導入したアントラセン誘導体を設計、合成し、静水圧下での光学特性を評価した。環状糖を導入した化合物1では、加圧に伴う吸収スペクトルのレッドシフトが見られ、その後、高圧下で1時間静置するとスペクトルの形状が変化し、減圧後も形状が維持される圧力に対するヒステリシス応答が観測された。一方、直鎖糖を導入した化合物2では加圧に伴うレッドシフトおよび、加圧下で静置した際のスペクトルの形状の変化は観測されたが、除圧後の元のスペクトルの形状に戻った。またこちらの化合物1はベシクル状の集合体を形成することが分かった。しかし、加圧の前後でモロフォロジーには変化は見られなかったため、吸収スペクトルの変化は、マクロレベルの変化に起因するのではなく、ミクロレベルの構造変化に起因すると考えられる。化合物1は環状糖のフリッピングにより複数の準安定構造を有し、加圧によって準安定構造へと変化し除圧後も維持できたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づき、多様な水素結合様式を形成する糖類を導入したアントラセン誘導体を設計、合成に成功した。そのアントラセン誘導体は圧力応答に対してヒステリシス性を有することがわかり糖鎖の有用性を証明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、研究計画に沿って実験・研究を行い、高圧下でのみ結合形成可能な超分子システムの構築のため、光応答性自己組織化分子の合成を行い、各種分光測定や電子顕微鏡観察を用いて、圧力応答性、光反応性を明らかにする予定である。研究計画を変更することなく、当初計画に沿った実験・研究を実施する予定である。
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