2020 Fiscal Year Annual Research Report
海馬層構造の形成と維持に関わる新規メカニズムの解明と、その疾患治療への応用
Project/Area Number |
20J23566
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
石井 圭介 名古屋市立大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | リーリン / 海馬 / 神経細胞 / てんかん / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
分泌タンパク質リーリンは、哺乳類の脳形成に必須な分子である。リーリンの欠損や機能低下は脳構造の破綻を招き、このことは精神神経疾患の増悪化に関与する。しかし、リーリンがどのような機構を介して海馬の層構造形成を制御するかということや、てんかん病態により生じるとされる海馬の構造異常に対して、リーリンが治療効果を示すかということは不明である。海馬の形成におけるリーリンの機能を理解することは、てんかん病態の解明やてんかんの治療方法の提案において重要な知見であると考えられる。本研究は、リーリンによる海馬形成制御機構の解明と、リーリンの機能増強がてんかん治療において効果的であるか否か検証することを目的とする。 生体内におけるリーリンの機能増強がてんかん病態時において防御的な効果を示すか検証するために、非切断型リーリンノックインマウスにピロカルピンを投与してんかんを誘発させた。その結果、発作の程度とてんかん誘発後の個体生存率は、てんかんを誘発させた野生型マウスと比べて差が見られなかった。 リーリンの機能低下により見られる海馬の構造異常が、生後のリーリン機能増強によって改善されるか検証するため、リーリンのC末端領域のみを欠損させたノックインマウス(ΔC-KIマウス)の脳内にリーリンタンパク質を投与した。ΔC-KIマウスでは生後において、海馬CA1領域と歯状回、大脳皮質表層において構造異常が見られることが明らかとなっている。ΔC-KIマウスに見られるこれらの構造異常が、生後におけるリーリンタンパク質の投与によりレスキューされるか、現在解析中である。 次年度は、リーリンタンパク質の投与によるリーリン機能増強が脳構造に与える影響について、詳細に解析する。さらにこの方法を用いて、脳内におけるリーリン機能増強がてんかん病態時において防御的な効果を示すかということを検証するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変リーリン機能増強マウスを用いた実験では、リーリンがてんかんに対して防御的な効果を示すということは明らかとならなかったが、もう一つのリーリン機能増強方法であるリーリンタンパク質の投与実験について、順調に行うことができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、リーリン機能低下マウス脳内へリーリンタンパク質を投与し、生後における海馬形成に及ぼす効果と、その分子メカニズムを明らかにすることを目指す。さらに、脳内へのリーリンタンパク質の投与がてんかんに対して防御的な効果を示すかということを検証する。
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