2021 Fiscal Year Annual Research Report
海馬層構造の形成と維持に関わる新規メカニズムの解明と、その疾患治療への応用
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20J23566
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
石井 圭介 名古屋市立大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | リーリン / 海馬 / 神経細胞 / 遺伝子改変マウス / 精神神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーリンは脳の層構造形成に必須な分泌タンパク質である。リーリンの欠損や機能低下は精神神経疾患発症の原因やリスクであることが知られている。これまで我々は、リーリンのC末端領域(CTR)が効率的な下流シグナル活性に必須であること、さらにリーリンCTRを欠損させたノックインマウス(ΔC-KIマウス)は脳構造の一部が異常であることを明らかにした。リーリン遺伝子欠損マウスを用いた研究から、海馬形成におけるリーリンの重要性は明らかである。しかし、リーリンがどのような分子機構を介して海馬形成に寄与するか、その全貌は未解明である。本研究は、ΔC-KIマウスを用いることにより、海馬層構造の形成と維持に関わる機構の解明と、リーリン機能増強がどの程度、精神神経疾患に対する治療効果を示すか検証することを目的とする。 海馬形成においてリーリンCTRが制御する分子機構を明らかにするため、野生型マウスとΔC-KIマウス海馬における既知のリーリン下流シグナル分子の発現量を解析した。その結果、ΔC-KIマウス海馬ではアクチン骨格制御タンパク質であるコフィリンのリン酸化量が顕著に低下していた。また細胞を産生時期毎に標識する実験から、ΔC-KIマウス海馬CA1領域では、胎生後期に産生された神経細胞が配置異常を示すことが明らかとなった。そこで、ΔC-KIマウスの胎生後期に産生された海馬神経細胞に、擬似リン酸化体コフィリンを過剰発現させた。その結果、ΔC-KIマウス海馬CA1領域において、神経細胞の配置異常が一部レスキューされた。このことから、リーリンCTRはコフィリンのリン酸化を介した細胞骨格制御により、胎生後期に産生された海馬神経細胞の移動を駆動することが示唆された。現在、リーリン機能増強マウスとリーリンタンパク質投与法を用いたリーリン機能増強が、ΔC-KIマウスの脳形成にもたらす効果を検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ΔC-KIマウスを用いた実験から、海馬の層構造形成におけるリーリンCTRの機能の重要性とその分子機構の一端が明らかとなったから。
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Strategy for Future Research Activity |
海馬形成において、コフィリンのリン酸化以外にも重要なリーリン下流分子機構の存在が示唆された。そこで、リーリンとその下流細胞内分子Dab1に着目し、リーリンCTRを介して発現変動する分子の同定及び同定分子の海馬における重要性を明らかにする。 また複数種類の改変型リーリンタンパク質の投与が脳形成に及ぼす効果を詳細に解析し、効果的なリーリン機能増強条件の絞り込みを目指す。
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