2020 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア産プロポリス由来成分を利用する痛風抑制を目指した機能性食品素材の開発
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20J23632
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
宮田 椋 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府食品栄養科学専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | プロポリス / 機能性食品 / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
プロポリスは植物樹脂由来の蜂産品であり、有用な生理活性物質が高濃度に含まれていることから、健康食品の素材として利用されている。本研究ではインドネシア産プロポリス中の生理活性物質を研究対象とし、複合的な生理活性評価を行うことで、主に痛風抑制を目指した新たな機能性食品素材の開発を目指している。本研究の達成により、研究を通したインドネシアへの国際貢献が期待される。 令和二年度はインドネシアのスラウェシで採取したプロポリスに含まれる痛風抑制物質および、その類縁体の有機合成を中心に研究を進めた。種々の検討の結果、目的化合物およびその類縁体の網羅的な合成ルートの確立に成功した。この研究成果は、国際誌への投稿を予定しており、現在原稿作成中である。また、有機合成した種々の化合物に関して、痛風抑制活性を評価したところ、合成した化合物には顕著な阻害活性は認められなかった。そのため現在は合成した化合物と既知生理活性物質との構造類似性より、パーキンソン病原因酵素である catechol O-methyltransferase (COMT) に着目して研究を進めている。 また、インドネシアの他の地域 (ロンボク島) で採取したプロポリスを研究対象として、その含有成分、生理活性の解明にも、並行して着手した。その結果、研究対象としたプロポリスより、文献未掲載の新規化合物を単離・同定した。また生理活性に関して、黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する抗菌活性を評価したところ、プロポリス抽出物および単離・同定した新規化合物に顕著な抗菌活性を確認した。また本プロポリスの起源植物に関して、現地の共同研究者と協力した養蜂場の現地調査と、LC/MS等による化学的分析の両面より、その起源植物の同定に成功した。本研究成果に関しても、国際誌への投稿を予定しており、現在原稿作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、インドネシアで採集されるプロポリスに関するものである。これまでにインドネシアのスラウェシ島で採集されたプロポリスより、尿酸生成酵素阻害活性を有する化合物を見出しており、今年度はその類縁体の合成と活性評価を実施してきた。これら類縁体の合成内容に関しては、現在国際誌への投稿を目指して原稿作成中である。合成した化合物には、顕著な尿酸生成酵素阻害活性は認められなかったものの、パーキンソン病の原因酵素の阻害効果が予想される成果が得られており、今後の進展が期待される。一方で、インドネシアのロンボク島で採集されたプロポリスからは、新規な化合物を発見することができ、この化合物は高い抗菌性を有することが明らかとなった。ロンボク島のプロポリスに関しては、インドネシアの共同研究者の協力により、プロポリスの原料となっている植物(起源植物)の同定に成功し、これらの成果も現在、投稿論文原稿を作成中である。 当初、自らインドネシア現地に赴き、フィールド調査も実施する予定であった。しかしながら、今年度は新型コロナの影響により、海外での調査はすべて中止せざるを得なくなった。そのことだけが、計画通りに本研究を進めることができなかった点であるが、それ以外においては概ね期待通り研究が進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度は合成した化合物と既知生理活性物質との構造類似性より、パーキンソン病原因酵素である catechol O-methyltransferase (COMT) に着目して研究を進めていく。このCOMTに関しては、ヒト由来の組み換え酵素の発現に成功しており、アッセイ系の確立にも成功している。そのため、ターゲットをxanthine oxidaseだけでなくCOMTも追加し、合成した化合物に関して、in vitro試験におけるスクリーニング、化合物と酵素との分子レベルでの相互作用解析を評価していく予定である。さらに当研究室所有のプロポリスの化合物ライブラリーを用いて、他地域産のプロポリスに関してもCOMT阻害活性を評価し、プロポリスによるパーキンソン病の予防効果を検証していく。 また、インドネシアの他の地域 (ロンボク島) で採取したプロポリスに関しては、新型コロナの状況が落ち着き次第、現地に自ら赴き、プロポリスの産業利用を目指した養蜂場の整備にも携わる予定である。
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Research Products
(4 results)