2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J23668
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 彩果 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 有機化学 / 植物学 / 生理活性分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は自らの意思で移動できないことと引き換えに、刻々と変化する自然環境にしなやかに順応するストレス耐性機構を有する。しかし、近年の世界的な気候変動は、植物のもつストレス応答の許容範囲を大きく超え、受精障害、発育不全などが起き、枯死へと至る非常に深刻な問題を提示している。このような環境ストレスによる成長阻害を合成小分子によって突破することができれば、厳しい環境変化の中でも食糧の生産量を上げることができ、迫り来る食糧問題の解決の糸口となる。申請者は、合成化学、植物生理学、植物生殖学を柱として、植物の生育プロセスに関与する様々な分子の作用機序を明らかにし、応用展開が可能なドラッグデザインにより植物にストレス耐性を付与する分子の創製を行う。さらに実地調査などの実用を目指した検討も行っていく予定である。 これまでに申請者は候補分子を2つ発見している。1つめは植物の気孔の開口を阻害する分子、2つめは受精を促進させる分子である。まず、これらの分子の植物内での作用機序解明を行っていく予定ある。プルダウンアッセイによる化学的アプローチと遺伝子改変植物を用いた遺伝的アプローチの両方から進め、迅速な作用機序解明を目指す。また、作用機序解明を行った上記の化合物についてモデル植物のシロイヌナズナに加え実用植物種を用いて、化合物の毒性や脂溶性、代謝安定性を評価し、それらを加味したリード化合物の創製を行う。リード化合物をもとに、実地調査を行い、実際に応用展開が可能かどうかを評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究員は自らの作業仮説や研究計画に基づいた研究活動に取り組み、期待以上の研究成果を挙げ た。まず、本研究員は植物の気孔の開口を阻害する分子の機構解明研究に取り組んだ。機構解明研究 には化学的側面と生物学的側面の両方からアプローチした。まず、化学的側面からはプルダウンアッ セイを用いて、標的タンパク質の同定を試みた。プルダウンアッセイには活性を保持したままの分子 プローブが必要である。そこで、これまでの構造活性相関研究をもとに活性を維持したままの分子プ ローブの合成に成功した。このプローブをもちい、プルダウンアッセイに取り組んだ。現在はその解 析に取り組んでおり、標的タンパク質が明らかになると機構解明研究は一気に加速する極めて価値の 高い研究である。また、生物学的側面からは、既知である気孔開口のシグナル伝達経路に作用する分 子との競合アッセイに取り組み、作用点の絞り込みに成功した。このように生物学と化学の両方のア プローチにより、迅速な機構解明研究を行っている。また、植物の受精を促進する分子の合成、活性 評価系の構築にも取り組んだ。これまで、本研究では評価系の定量性がないことが問題であった。そ こで、現在、定量性のあるアッセイ系の確立に取り組んでいる。 以上のことから、本研究員の今年度の研究活動には期待通りの進展があったと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
プルダウンアッセイおよびタンパク質解析により詳細な作用機序解明を行う。作用機序解明を行った化合物についてモデル植物のシロイヌナズナに加え実用植物種を 用いて、化合物の毒性や脂溶性、代謝安定性を評価し 、それらを加味したリード化合物の創製 を行う。植物の気孔の開口を阻害する分子は乾燥ストレス耐性、受精を促進させる分子は温度 ストレ ス耐性を付与するが、モデル植物においてこれらの化合物のストレス耐性付与についての検討を行う。リード化合物のデザインには新たに何種 類かの化合物を合成し、植物投与による活性評価を行う。
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Research Products
(2 results)